研究概要 |
コバルトを含有するペロブスカイト型酸化物として、(La,Sr)[Co,Fe]O3, (Ba,Sr)[Co,Fe]O3, (Gd,Ba)[Co]O3を選定した。(以下、それぞれLSCF, BSCF, GBCOと略す)化学式中()および[]内は、ペロブスカイトのAおよびBサイトをそれぞれ占有する元素を示す。これらの材料の酸化物イオンと空孔の配置関係、およびイオン伝導性について注目し、マルチスケール計算シミュレーションにより検討を行った。 各構造における酸素と空孔の配列自由度は非常に大きな数値となるため、正確なイオン導電性シミュレーションを行うためには、数千以上の大きな粒子数から構成される系が必要となる。このような計算系ではモンテカルロ法(MC法)や、分子動力学法(MD法)が有効であるが、一般的には実験値を参照して経験パラメーターを決定する過程を含むため、実験と計算を各々独立的に議論することが難しい。そこで、高精度第一原理計算を用いてMC法やMD法に必要なパラメーターを抽出し、実験結果から独立した手段で分子シミュレーションを行った。その結果、酸素と空孔の相互作用に由来する相転移現象や、カチオン整列に由来する酸化物イオン導電性の変化を明らかにすることができた。 実験的には主にBSCFとLSCFに注目して材料の合成実験を行った。この材料では、大気中での二酸化炭素との反応によって炭酸化が進行するため、次年度以降のイオン導電性測定や電子構造解析実験などで精密な実験測定が困難になることが判明した。そこで、二酸化炭素との反応性を温度および時間に対してTG測定と第一原理計算を組み合わせて決定した。これにより、組成および測定温度域を調整することで今後の実験を実施する見通しを得ることができた。 以上の得られた成果については適宜学術論文や学会等で発表した。
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