研究実績の概要 |
昨年度に引き続き、(La,Sr)[Co,Fe]O3および(Ba,Sr)[Co,Fe]O3系の材料におけるイオン・電子混合導電性について計算および実験から検討を行った。 計算では本年度は第一原理計算によって、電子の局在化(ポーラロンの生成)とポーラロン電子伝導に関する研究を完了した。特に本研究で対象としたCo系では0.1 eV程度の非常に低い活性化エネルギーとなることを確認し、材料中では電子伝導は律速にならず電子配置は常に局所平衡を保つことを確認した。以上より、本研究で前提にしていた実験的事実である電子輸率~1の近似を検証できた。更にCoの電子状態をhigh/lowスピン状態に制御することで、イオンの移動エネルギーに有意差があることを確認できた。今後は電子配置の局所平衡を考慮したモンテカルロ計算を行う予定である。また、電子局在化も更に考慮したイオンのサイト間ホッピングのポテンシャル障壁を第一原理計算とNEB法を組み合わせて行っている。局在電子を含む系における第一原理計算は多くの場合、電子配置自由度の多様性から真に安定な構造を決定することが技術的に困難であるが、本研究では2010年に提案されたRamping法(Meredig et al., PRB, 82, 195128, 2010)に注目して基底状態決定のアルゴリズムが精度よく再現することを本年度までに確認することができ、現在電子局所平衡にある系の粒子間相互作用についてサンプリングを行っている。 実験的には昨年度までに課題として抽出された二酸化炭素による劣化(酸素分圧制御時に二酸化炭素ガスを導入するため)の影響を受けないように、酸素ポンプ方式の高精度な酸素分圧制御法を確立することができた。本手法を熱天秤装置に接続し、酸素空孔生成エネルギーを高精度に決定することで次年度以降に計算結果と直接対比することが可能になった。
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