研究課題/領域番号 |
25709061
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研究機関 | 芝浦工業大学 |
研究代表者 |
石崎 貴裕 芝浦工業大学, 工学部, 准教授 (50397486)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 超はっ水 / 超親水 / 吸着水 / 水の動的制御 / ヒステリシス |
研究実績の概要 |
平成26年度は以下の2項目に関する研究開発を行った。 (1)超はっ水・超親水および低ヒステリシス表面形成技術の確立 Siウェハ上への有機分子膜処理を実施し,低ヒステリシス表面の形成を行った。具体的には,分子構造の異なる3種類の分子を用いて,熱CVD法により,低ヒステリシス表面の形成を試みた。原料には,枝状構造のTris(trimethylsiloxy)silylethyltriethoxysilane (TTSES)と直鎖構造の Octadencyltyimethoxysilane (ODS)及びMethoxytrimethylsilane (MMS)を用いた。処理温度は100~190℃,処理時間は6~72hとした。濡れ性の評価には水滴接触角計、表面形状の観察には原子間力顕微鏡(AFM)、皮膜の化学結合状態の評価にはX線光電子分光(XPS)を用いた。作製した皮膜表面の静的接触角は90~105°の値になり,はっ水性を示した。また,その表面の接触角ヒステリシスは5~25°であった。これらの結果から,分子鎖の長い直鎖構造を有するODSの接触角ヒステリシスが最も小さくなるということを明らかにした。また,Cassieの式を用いて各種分子の表面被覆率を算出した結果,TTSESが90%以上と高い被覆率になることを明らかにした。この高い分子被覆率は原料分子の構造に由来するものであると推察できる。
(2)モデル表面における吸着水の構造の解明および吸着水の構造と水の動的挙動の関係 上述したモデル表面における吸着水の構造を解明するために,ラマン分光,FT-IR分光,DSCを用いて各種モデル表面における吸着水の挙動を分析した。これらの分析結果から,自由水と結合水に起因するピークが観測され,ヒステリシスが小さい表面ほど,自由水に起因する成分が多いことを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度の研究項目である(1)超はっ水・超親水および低ヒステリシス表面形成技術の確立,(2)これらの表面における吸着水の構造の解明,(3)吸着水の構造と水の動的挙動の関係に関する研究を実施し,超はっ水,低ヒステリシス表面の形成技術を確立すると共に,これらのモデル表面における吸着水の構造を明らかにし,さらに,吸着水の構造と水の動的挙動の関連性に関する知見を得ることに成功したため。
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今後の研究の推進方策 |
今後は,(1)超はっ水・超親水および低ヒステリシス表面形成技術の確立,(2)モデル表面における吸着水の構造の解明,(3)吸着水の構造と水の動的挙動の関係,(4)水の動的制御表面のデザインに関する研究開発を行う。(1)超はっ水・超親水および低ヒステリシス表面形成技術の確立では,平成25と26年の結果に基づき,複合的な有機分子を用いた表面処理を行う技術開発を行うと共に,その表面特性の評価技術に関する研究開発を実施する。(2)モデル表面における吸着水の構造の解明では,現在までに取得したFT-IRやラマンスペクトルのより詳細な物理化学的解釈を深めるために,量子科学計算を用いた構造・振動解析を実施する。(3)吸着水の構造と水の動的挙動の関係では,得られたスペクトルに基づく吸着水の構造とモデル表面の濡れ性との関連性を系統的に調査する。(4)水の動的制御表面のデザインでは,(1)~(3)の研究結果を総括し,水の動的挙動を制御するための表面修飾法を提案する。
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