研究課題/領域番号 |
25709066
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研究種目 |
若手研究(A)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
岡本 範彦 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (60505692)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 脆性延性転移 / 透過電子顕微鏡 / その場観察変形試験 / 塑性変形 / 微小寸法試料 / サイズ効果 |
研究概要 |
最近,合金化溶融亜鉛めっき(GA)鋼板のめっき被膜において,単体バルク状では脆性的な化合物が,薄膜状でかつ延性相に挟まれた形態をとる場合に室温靭性を有することを示唆する実験結果が得られた.本研究では,単純なモデル材料を用いてミクロン/サブミクロンサイズ試料のSEM内その場微小変形試験を行うことにより,延性相にサンドイッチされた脆性相の靭性化機構を解明することを目指す.まずGA鋼板のめっき被膜を構成する一連のFe-Zn系金属間化合物相の各単相多結晶マイクロピラーの圧縮試験を行った結果,塑性変形能を有することが明らかとなったΓ相(Fe基板に隣接)およびζ相(最表面)の変形の素機構(すべり系,転位組織)を明らかにすべく,各化合物相の単結晶の圧縮変形試験を行った.本来ならバルクサイズの単結晶を使用して変形試験を行うべきであるが,フラックス法により単結晶の作製を試みたものの,最大でも数百μmの微細な結晶しか得られなかったため,マイクロピラー圧縮試験を行った.さまざまな圧縮軸方位で圧縮を行った結果,Γ相では{110}<111>すべりが,ζ相では{110}<112>および(100)[001]すべりが活動することが明らかとなった.Γ相は立方晶系の対称性を有するため,{110}<111>すべりのみで5つの独立な歪成分を生じることができるためvon Misesの条件を満たすが,ζ相は単斜晶系の低い対称性を有するため,2つのすべり系が働いてもvon Misesの条件を満たさず,多結晶での変形は困難であることがわかった.平成26年度に実施するSEM内その場微小変形試験に供するためのモデル材料として,浮遊式帯域溶融法により脆性・延性相から構成される共晶ラメラ二相合金を作製した.さらに,熱処理時間を変えることにより,種々のラメラ間隔に制御できることが確認している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画通り,初年度(平成25年度)に各Fe-Zn系化合物相の基礎物性を調査することができた.また,浮遊式帯域溶融法により脆性・延性相から構成される共晶ラメラ二相合金を作製しており,平成26年度に実施するSEM内その場微小変形試験に供することができ,大方の事前準備は整っている.
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今後の研究の推進方策 |
まず,SEM内その場微小変形試験を可能にするために,as-receivedのダイヤモンド冶具を集束イオンビームにより適当な形状に加工する.適当な単相試料を用いて引張試験の軸調整などを最適化する.さらに,脆性相の厚さが異なる種々のモデル材料マイクロ試料を作製し,その場観察圧縮および引張試験を行う予定である.
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次年度の研究費の使用計画 |
当初SEM内その場観察変形試験装置をレンタルする予定であったが,別予算により装置を購入することができたため,計上していた機器レンタル料を平成26年度に繰越すことにした. 次年度予算との合算使用により,熱分析装置を購入する予定である.また,得られた成果を学術会議などで研究発表する際の旅費などにも使用する予定である.
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