研究課題/領域番号 |
25709067
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研究種目 |
若手研究(A)
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
李 海文 九州大学, 水素エネルギー国際研究センター, 准教授 (40400410)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 水素貯蔵 |
研究概要 |
今年度では、細孔径と細孔壁表面を精密に制御したナノポーラスカーボンの合成とそれらにホウ素系錯体型水素化物の充填方法を検討すると同時に、ナノ空間制御の効果を検証するために、ナノ空間制御しないLiBH4の水素吸蔵放出特性におけるナノサイズNiの添加効果およびホウ素系錯体型水素化物の中間化合物M2B12H12の合成方法の開発も実施した。 1)界面活性剤を調整することにより、ナノポーラスカーボンの細孔径を制御することが可能となった。ナノポーラスカーボンとLiBH4を瑪瑙乳鉢で均一混合した後、1.0MPaの水素中で約290℃で1hほど保持することで、LiBH4をナノポーラスカーボンの細孔内に充填できることが、充填前後細孔容積の減少から確認できた。さらに、有機溶媒法によるLiBH4をナノポーラスカーボンへの充填も検討し、有機溶媒の選択が充填率の向上や充填後溶媒の除去において大変重要であることが分かった。 2)LiBH4に25質量%のナノサイズNiを添加することにより、水素放出ピーク温度を約50K低下させた。LiBH4とナノサイズNiとの反応によるNi4B3の生成が熱力学的促進効果であると考えられる一方、生成したNi4B3が未反応LiBH4の水素放出における触媒効果も示唆された。また、Ni4B3の生成がLiBH4の水素吸蔵反応においても顕著な促進効果が確認された。上記のようなナノサイズNiの添加効果に関して、ナノポーラスカーボンへの充填試料においても検討する。 3)金属水素化物MHnあるいはホウ素系錯体型水素化物M(BH4)nとデカボランB10H14との熱処理による無水M2B12H12の合成方法を開発し、M(BH4)nとB10H14との熱処理による無水M2B12H12の合成が最も適切であることが分かった。今後は、無水M2B12H12の熱力学的・速度論的特性におけるナノ空間制御の効果も調査する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度では、界面活性剤を調整することにより、ナノポーラスカーボンの細孔径を制御することが可能となり、溶融法によるLiBH4をナノポーラスカーボンの細孔内への充填も成功した。有機溶媒法によるナノポーラスカーボンにホウ素系錯体型水素化物の充填に関しても、有機溶媒の選択において重要な知見を得た。また、LiBH4の水素吸蔵放出反応におけるナノサイズNiの促進効果を確認でき、ホウ素系錯体型水素化物の機構解明および特性向上において必要不可欠とされる中間化合物M2B12H12の合成方法の開発にも成功した。上記の研究成果から、今年度の研究はおおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、引き続きナノポーラスカーボンの細孔内へのホウ素系錯体型水素化物の充填条件および充填方法の最適化を行い、ナノポーラスカーボンに充填したホウ素系錯体型水素化物の水素吸蔵放出反応の熱力学的・速度論的特性を調査する。さらに、水素吸蔵放出反応過程における化学結合状態や局所原子配列の変化を評価する。また、ナノ空間による水素吸蔵放出反応の制御効果を検証するために、ホウ素系錯体型水素化物の中間体M2B12H12の熱力学的・速度論的特性およびそれらに対するナノポーラスカーボンへの充填効果も調査する。
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次年度の研究費の使用計画 |
金属ホウ素水素化物のナノポーラスカーボン充填に関して、充填条件の探索実験は予定より順調に進行したため、本年度では一部の試薬購入や人件費・謝金が必要としなくなったため、次年度使用額が生じた。 次年度使用額に関しては、試薬等購入するための物品費として活用する。
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