研究課題/領域番号 |
25709067
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
李 海文 九州大学, 水素エネルギー国際研究センター, 准教授 (40400410)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 水素化物 / 水素貯蔵 / イオン伝導 |
研究実績の概要 |
今年度では、ホウ素系錯体型水素化物の水素放出反応の中間化合物M2/nB12H12(nはMの価数)の合成およびその相変態、原子拡散や熱分解挙動を調査した。 1)従来の溶媒法により合成困難であった無水MgB12H12について、独自に開発した溶媒を使用しない合成プロセルにより作製した。合成した無水MgB12H12は非晶質構造であることが粉末X線回折測定より判明した。これは陰イオン[B12H12]2-と陽イオンMg2+のイオン半径比が大きすぎためと考えられる。 2)無水MgB12H12とCaB12H12の熱分解挙動を評価した結果、熱分解反応は2段階で進行することがわかった。すなわち、B12の籠状構造を維持しながら水素を欠損したM2/nB12H12-xの生成、および高温側において(M2/nB12H12-y)nなどの重合体の生成が確認された。アルカリ金属からなる(M2/nB12H12-y)n (M= Li, Na, K)と類似な分解挙動が示唆された。 3)二つの金属からなるLiNaB12H12は溶媒を使用しない合成プロセルにより合成した。LiNaB12H12の相変態温度は単一金属からなるLi2B12H12とNa2B12H12のそれぞれより低いことがわかった。また、LiNaB12H12のイオン伝導度は低温相から高温相への相変態に伴い約1000倍高くなることが確認された。550K付近ではLiNaB12H12のイオン伝導度が約0.8S/cmとなり、単一金属からなるLi2B12H12とNa2B12H12のそれぞれの約10倍であることがわかった。これらのことから、二つの金属の組み合わせによりM2/nB12H12のイオン伝導度の向上が期待できるといえる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度では、従来の溶媒法により合成困難であった無水MgB12H12を独自に開発した溶媒を使用しない合成プロセルにより作製し、その熱分解挙動を明らかにした。さらに、世界初めて二つの金属からなるLiNaB12H12の合成に成功し、高温相における高いイオン伝導性を発見し、超イオン伝導体としての可能性も示唆された。上記の研究成果から、今年度の研究はおおむね順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、M2/nB12H12のイオン伝導性と化学組成やイオン半径などの関係を詳細に調査し、高いイオン伝導性に寄与する陽イオンの役割を究明する。さらに、M2/nB12H12の熱分解挙動とホウ素系錯体型水素化物の再吸蔵反応との相関を調査する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は、試料合成および物性評価などの実験研究は予定より順調に進行することができた。それに伴い、直接経費の助成金を効果的に執行することができ、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額は、高純度試薬やガス、熱分析用試料容器等の消耗品、および研究打合せや成果報告のための旅費等に使用する。
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