研究課題/領域番号 |
25709068
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研究種目 |
若手研究(A)
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
松本 洋明 香川大学, 工学部, 准教授 (40372312)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 機械材料・材料力学 / チタン合金 / 超塑性変形 / 組織制御 / マルテンサイト |
研究概要 |
α’マルテンサイト組織を出発組織としたTi-6Al-4V合金の圧延加工を行い、加熱温度が750℃~800℃の範囲で温度調整し、加工速度を7s-1以上に設定することで、平均径0.5μm以下の等軸組織が多く占める超微細粒組織を有する板材(幅12cm)の製造に成功した。 製造したTi-6Al-4V合金板材をα’-UFG材と呼び、本素材は650℃~750℃の低温変形においても引張変形で200%以上の巨大伸びを示し、ひずみ速度感受性指数m値も0.3以上を示し、低温超塑性が発現している事が分かった。詳細な変形組織の組織解析の結果、α’-UFG材は準安定なα単相組織であり、変形過程で微細なβ相が粒界上に析出して、これが応力集中の緩和機構として大きな役割を担い、更にα/β界面の粒界すべりを促進させるため、良好な超塑性特性を示したと考えられる。転位集積の評価から、α’-UFG材の低温・高速超塑性の変形過程はひずみ量に応じて、活動する変形機構が異なる事が示唆された。詳細には、変形で一様に粒界すべりが支配的な機構ではあるが、低ひずみ域ではβ相の析出、未再結晶部の連続動的再結晶の活動、更にはBall-Hutchinson モデルに基づいた粒界すべりが支配的となり、一方でひずみ量の増加に伴い、粒界すべりはGifkins Core-Mantle型の機構に移行する事が理解された。またInelastic Variable modelに基づく粒界すべりの活動頻度は70%程度で高い値を示し、α’-UFG材の未再結晶領域がわずかに混在した不均一な組織形態およびα単相の準安定状態が効果的に粒界すべりを誘発した事が推察される結果である。 以上より、25年度は組織学的評価を中心としてα'-UFG材の超塑性機構を解明し、流動特性についていくつかの粘塑性モデルと比較しながら評価・解析を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
力学挙動の評価に関しては、機器導入の遅れから、十分な結果が得られていない点もあるが、一方で組織学的な評価・解析を詳細に行うことが出来たため、超塑性の変形機構を詳細に議論し、この点については優れた知見を得る事が出来た。また理論的にも、流動特性についていくつかの塑性モデルの結果と実験結果を比較することで、変形機構を議論し、新しい知見を得る事が出来た。
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今後の研究の推進方策 |
26年度では以下の3点に集中し、評価・解析を行う。 ①変形機構に及ぼすα/β相量比、結晶粒径および粒界の特徴の超塑性特性に及ぼす影響(α’-UFG材、Ti-6Al-4V合金) ②有限要素シミュレーションを駆使したα’-UFG材の超塑性の変形解析 ③α’マルテンサイト組織を出発組織とした、直接的な高温変形挙動の評価とプロセス設計 ①では昨年度の結果をベースとして、より発展的な評価・解析を行う。詳細には前年度に得られたα’-UFG材の変形挙動の結果と比較しながら超微細粒組織形態における超塑性特性へのα/β相量比、結晶粒径および粒界の特徴の影響を基礎的に解明する。この過程において航空機用Ti合金(Ti-6Al-4V)における超塑性特性の低温・高速化させる組織因子・変形機構を明らかとする。②では実験で見出された超塑性の低温・高速化を実現する組織因子について、理論的(シミュレーション)にもその影響を評価して、α’-UFG材の超塑性の変形機構を明らかとする。更に本素材における変形の最適な構成式を構築させる。③ではα’マルテンサイト組織を有するTi-6Al-4V合金を直接、引張試験(650℃~850℃)を行い、その変形挙動と組織変化を評価する。これは、変形における動的な微細粒組織形成と、その後の超塑性特性の発現の可能性を評価するためである。
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次年度の研究費の使用計画 |
一部、購入した消耗品にて価格が安くなり、1493円の超過(繰越)が生じた。 消耗品(薬品アセトン)の購入を行う。
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