研究実績の概要 |
化学気相析出法は、気相からの析出反応により基材をコーティングする手法であり、合成温度や炉内圧力を変化させることで、多彩な構造制御が可能である。被覆性が高いことから、実用コーティング法として幅広く使用される。本研究課題では、従来の熱プロセスでは難しいが、レーザー反応場で活性化した化学気相析出プロセスに高過飽和原料蒸気を導入することで、セラミックスコーティングプロセスにおける気相からの完全配向成長技術を達成し、気相成長の学理を追及することを目的とする。具体的には、多結晶基板上への完全c軸配向α-Al2O3膜の気相合成プロセスを確立する。α-Al2O3は切削工具向けの硬質コーティング材料であるが、結晶配向により機械的特性が変化することから、実用上はc軸配向成長が求められる。しかし、c面は原子稠密面であり、成長速度が低いことから、下地層なしでは気相からのc軸配向成長は不可能とされてきた。 これまでの研究において、合成条件 (原料気化温度、成膜温度および炉内圧力) を最適化することで、多結晶AlN基板上に、配向係数90%のほぼ完全にc軸方向に自己配向成長したα-Al2O3膜を気相合成できることを示した。さらに研究対象材料をα-Al2O3からTiO2, ZrO2およびこれらのコンポジット膜に展開した。TiO2およびZrO2のコンポジット膜では、顕著な配向成長とともに、それぞれ羽毛状組織や樹枝状組織を有する特異なナノ構造を持つコーティング膜が生成することを明らかにした。
|