研究課題/領域番号 |
25709070
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研究種目 |
若手研究(A)
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
土谷 博昭 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50432513)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 電気化学 / 金属間化合物 / 溶解性 / 酸化物成長 / 陽極酸化 |
研究概要 |
電気化学プロセスによって合金表面に形成する酸化物層の厚さは酸化反応速度と溶解速度のバランスにより決定され、酸化反応速度と溶解速度は合金組成に応じて変化するため合金表面に形成する酸化物層は合金組成に応じた成長、すなわち酸化物層の厚さは合金組成とともに単調に変化すると考えられるが、金属間化合物相では酸化物の成長が合金組成に対応しないことがある。本年度は金属間化合物相において見られた特異な酸化・溶解挙動の解明を目的とし、様々な種類の金属間化合物をアーク溶解にて作製し、その組成、結晶構造をEPMA、XRDなどにより、反応性を電気化学測定、溶液分析を用いて調査した。 金属間化合物相が含まれる様々な2元系合金についてアーク溶解により合金インゴットを作製したが、多くの合金系で試料形状の維持が困難であったため、反応性調査に用いることができた合金系に限りがあった。本年度は、なかでも、比較的容易に作製することができたTi-Fe系合金、Ti-Al系合金等を中心に実験を行った。電気化学測定では、通常の動電位分極測定とともに、目的の電圧まで電圧を増加させ所定時間保持する方法で酸化物を成長させ、その厚さを評価する方法でも酸化・溶解挙動を調査したところ、固溶合金組成では組成とともに厚さは単調に変化したが、ある組成の金属間化合物相において極小値をとり単調な変化を見せなかった。また電圧が高いほど酸化物の膜厚は増加することが一般に知られているが、金属間化合物相ではそのような電圧の効果はなく電圧による単調な増加は見られなかった。電気化学測定後の電解液に溶出したイオン量を測定したところ、固溶合金組成では溶出イオン比はおおよそ合金組成と一致したが、金属間化合物相では溶出イオン比は組成どおりではなく選択溶出が確認された。このような特異な酸化物の成長挙動には結合エネルギーが関係している可能性があることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は金属間化合物相を含む様々な2元系合金を作製し電気化学評価・表面分析などを行うように計画した。機械的強度が十分でないなど電気化学測定に用いることができる合金系が限られたが、今後の指針となる成果は十分に得られたため。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は電気化学測定を行うための十分な強度を有する金属間化合物相の作製に苦心したため検討することができた合金系は限られたが、今後の指針に繋がる成果は得られた。そこで、今後は、引き続き2元系合金と新たに3元系合金を用いて、本年度得た指針の検証を行い、医療用金属材料の合金設計へと繋げ、設計した合金の模擬生体環境下での溶解性及び生体適合性を調査する。
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