研究課題/領域番号 |
25709071
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研究種目 |
若手研究(A)
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研究機関 | 香川高等専門学校 |
研究代表者 |
嶋崎 真一 香川高等専門学校, 機械電子工学科, 准教授 (00447145)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 球状シリコン太陽電池 / 材料電磁プロセッシング / 液体金属ジェット / 金属粒子 / ジェット分断 |
研究概要 |
今年度は、ジェット分断による液滴生成を高電場中で行うことにより、液滴を帯電させて滴同士の合体を防止する効果の検証を目的とした試験を行った。研究協力者であるネクストソーラー株式会社所有の装置に高電圧印加機構を新たに組み込んで、溶融シリコンにおける高温試験を行った。 シリコンを溶融させるのに必要な高温状態では、絶縁材料の絶縁特性を維持することが難しく、また雰囲気ガスも容易に放電してしまう。高電圧印加をどのような機構で行うのか、プラズマや高電圧電源の専門家の意見を参考にしつつ、検討を行った。その結果、電気的な絶縁を担保すべき部材は高温部から十分に離し水冷するなどして低温(少なくとも200℃以下)を維持すること、電圧印加用の電極間の距離をできるだけ確保することなどの対応策が考案された。 これらの対応策を実施した結果、溶融シリコンジェットに対して、2.2kVの高電圧を安定して印加できるようになり、シリコン滴の合体頻度を半分程度まで低減させることに成功した。また、回収した凝固シリコン滴の歩留まりも1.5~2倍程度改善している。 一方で、液同士の合体を完全に防止するにはより高い電圧が必要であるが、今回の装置では2.2kVが印加可能な最大電圧であり、2.2kV以上の電圧を印加すると電気的な絶縁が破れてしまい実験が継続できなかった。電圧印加機構を後から追加したことによる装置的な制約があり、現有装置を用いてこれ以上改善することは困難である。今年度の研究で得られた知見を生かして、現在、電圧印加機構を予め組み込んだ装置を設計中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成26年2月末日をもってそれまで勤めていた東北大学を辞し、平成26年3月1日より現任校(香川高専)に異動した。そのため研究環境が変化し、実験装置の解体・移設・再構築、また計算環境の移設などの作業に時間が取られ、当初予定していた計画よりは遅れ気味である。 ただし、異動が確定した時点からは、研究協力者(ネクストソーラー株式会社)との共同研究を先取りして優先して行い、異動による研究計画への遅れを最小限にとどめるようにしている。
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今後の研究の推進方策 |
溶融シリコンを帯電させるための高電圧印加機構については、十分な目処が立っている。現在、研究協力者であるネクストソーラー株式会社でその設計をおなっている段階である。一方で、液滴の合体を防止するためには、どの程度の電圧を印加すれば良いのかは未だ良く分かっていない。高温での試験においては、電気的な絶縁を確保することが低温モデル試験よりも困難であるために、必要な最小限の電圧を予測できることは重要である。 そこで今年度は、液滴合体を防止するために必要な電圧を予測するためのモデルを開発することを目的とした研究を行う。この研究は以下の2つのステップから構成される。1)印加電圧と液滴帯電量の関係の調査、2)液滴帯電量と合体頻度との関係の調査。前者については、エレクトロメータを用いて液滴の帯電量を実測し、Brandenbergerらによる理論モデルと比較・検討を行う。後者については、高速度ビデオカメラによる観察結果をもとにして、どのようなパラメータで整理できるのかを検討する。実験には低融点金属であるガリウムや、各種水溶液、エタノールなどを用いる。 また、高温の溶融シリコンを用いて電磁力間欠印加と高電圧印加を同時に行うにあたって、電磁力集中印加するためのデバイス(コンセントレータ)の形状を再検討する必要がある。特に電磁力を集中させるための孔径を現状よりも大きくした場合に、どの程度電磁力の効果が影響を受けるのかを数値計算および実験により検討していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
25年度の途中で異動があることが確実になったため、計画の順番を一部変更した。先に研究協力者であるネクストソーラー株式会社所有の装置に高電圧印加機構を組み込んで高温系の装置を用いて実験を行うことを優先し、高電圧印加にかかる実験は異動後に行うことにした。 次年度使用額をと26年度の予算を合わせて、本研究の遂行に必須の測定装置である高速度ビデオカメラを購入する。
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