研究概要 |
本研究では酸化物プロトン伝導体の局所構造変化が与えるプロトン溶解及びプロトン伝導度への影響を調べるために異種元素置換が与える効果を検討した。具体的にはSrをドープしたLaMO3系ペロブスカイトのMサイトをAl, Sc, In, Yb, Yのイオン半径が大きくなる順で3価のカチオンを変化させた際のプロトン溶解量を熱重量分析により調べた。その結果、Al<Yb=Y<Sc<Inの順でプロトン濃度が大きくなる傾向が見られ、LaMO3系のペロブスカイトにおいてはMサイトがInの際に最もプロトン溶解に適した構造を取ることがわかった。しかしながらプロトンの最大溶解量はドーパントであるSrの濃度に達することはなかった。さらに最大プロトン溶解量がドーパント濃度の約1/10であるSrをドープしたLaYbO3のYbを同価数のInで一部置換するとInの置換量の増加と共にプロトン溶解量が増加することを確認した。価数は同価数でありInの置換に伴い酸化物イオン空孔は増加していないがプロトン溶解量は増大していることからプロトン溶解には最適な局所構造が存在することが推測できる。また、Mサイトへの異種元素置換によってプロトン溶解反応の標準自由エネルギー変化が大きく変わることが明らかになった。具体的にはInの置換と共に最大溶解量は増加する一方でプロトン溶解反応の標準自由エネルギー変化は増加してしまうことがわかった。 プロトン伝導度においても異種元素置換が与える影響はプロトン溶解量と同様の傾向が見られた。また、導電率とプロトン濃度よりプロトン移動度(プロトン拡散係数)を見積もった結果、異種元素置換によって僅かに移動度は減少することがわかった。これはプロトンとドーパントの会合欠陥の増加もしくは結合エネルギーの増加が予想されるが更なる今後の検討が必要である。
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