研究課題/領域番号 |
25709073
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
下山 裕介 東京工業大学, 理工学研究科, 准教授 (30403984)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 超臨界含浸 / シリコンハイドロゲル |
研究実績の概要 |
眼科レンズ用に合成したシリコンハイドロゲルへのNorfloxacinの含浸について,超臨界二酸化炭素利用したプロセスの操作因子と,眼科レンズからのNorfloxacinの放出挙動について検証を行った.超臨界二酸化炭素を利用した含浸法として,超臨界二酸化炭素中に直接Norfloxacinを溶解させるSupercritical Solution Impregnation (SSI)法と,超臨界二酸化炭素を接触させた水相中において眼科レンズの含浸を行う,Pressurized-CO2 and Aqueous Impregnation (PCAI)法を適用した.また,シリコンハイドロゲルを合成する際には,親水性を有するN,N-dimethylacrylamide (DMA)と,疎水性を有する3-methacryloxypropyltris(trimethylsiloxa) silane (TRIS)の比を変えたハイドロゲルを作製し,Norfloxacinの放出挙動に及ぼす影響について考察した.作製したシリコンハイドゲルの熱分解性について,熱重量分析装置により測定した.SSI法により作製した眼科レンズからのNorfloxacinの放出挙動では,含浸工程における水和の有無が,Norfloxacinの含有量ならびに放出挙動に影響を与えることが確認された.また,親水性のDMAの含有比が大きいシリコンハイドロゲルに対して,Norfloxacinの含有量も増大することが確認された.PCAI法において,水溶液のみの含浸プロセスであるAqueous Impregnation (AI)法と比較して,Norfloxacinの含有量は減少した.これは,超臨界二酸化炭素と水相が接触することで,水中のpHが下がり,ハイドロゲルへのNorfloxacinの分配が低下したためであると考えられる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
眼科薬物としてNorfloxacinに対して,超臨界二酸化炭素を利用したシリコンハイドロゲルの含浸プロセスにおいて,当初計画していた超臨界二酸化炭素を直接的な含浸媒体として利用するSupercritical Solution Impregnation (SSI)法に加え,水相に超臨界二酸化炭素を接触させたPressurized-CO2 and Aqueous Impregnation (PCAI)法による含浸プロセスにも着手しており,当初の計画以上に進展している.SSIとPCAIを利用した含浸プロセスにおいて,それぞれの操作因子と,眼科レンズからのNorfloxacinの放出,ならびに眼科レンズ中のNorfloxacinの含有量について,系統的なデータを蓄積した.その結果,両手法において,超臨界二酸化炭素の効果により,Norfloxacinがシリコンハイドロゲルの内部にまで含有され,眼科レンズからの放出挙動において,徐放的な放出が確認された.
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今後の研究の推進方策 |
これまでの成果により,SSI法ならびにPCAI法において,超臨界二酸化炭素の効果により,眼科レンズへの薬物の徐放的な放出が達成されることが可能となることが示唆されている.今後の研究推進として,ここで示した薬物の徐放性をさらに促進するために,シリコンハイドロゲルの界面活性剤の添加について検証を行う.界面活性剤をシリコンハイドロゲルへ添加する際にも,界面活性剤をゲル内部まで含有させる手法として,超臨界二酸化炭素の効果が期待できる.さらに,SSI法におけるプロセス設計において必要となる超臨界二酸化炭素に対する薬物溶解度,PCAI法のプロセス設計において必要となる薬物の超臨界二酸化炭素相/水相間の分配について,局所組成を導入した状態方程式を提案し,それぞれの挙動を把握する.
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