研究課題
本研究では,「量子分子篩」による水素同位体分離に最適な極微細孔を有するゼオライト-炭素複合多孔体(ZCC)を創製し,高効率な重水素分離プロセスの設計を可能とすることを最終目的としている。すなわち,化学気相成長法により10-18員環といった中-大細孔を有するゼオライトの細孔内を熱分解炭素で被覆・修飾し,その細孔径を0.3 nmに制御することで高い重水素選択性を実現することを目指している。このため,以下の4項目を柱とする研究を実施している。I. ZCC合成シミュレーション:ZCCの合成・探索を効率的に行うために,ZCCの合成シミュレーション・分子モデリング手法を確立し,コンピュータシミュレーションによる大規模な「仮想実験」を行なう。II. 水素同位体混合吸着シミュレーション:量子分子篩の平衡論/速度論的理解を可能とするための分子シミュレーションコードの開発を行い,混合吸着等温線測定および破過曲線測定等の実験結果と比較・検討することで,ZCCの重水素分離特性を明らかとする。III. ZCC合成装置開発・ZCCキャラクタリゼーション,IV. 水素同位体吸着実験・装置開発。H26年度はH25年度に引き続き,分子動力学シミュレーションによって,種々のゼオライトを対象とするZCCの合成シミュレーションを行った。得られた各ZCCモデルに対して量子効果を考慮した遷移状態理論を適用し,速度論的に高い重水素選択率を示すものの探索を行ったところ,有望な重水素選択率を持つZCCモデルを得ることができた。また,化学気相成長法(CVD)を用いた実験によるZCC合成を開始した。
3: やや遅れている
H26年度の実施計画に掲げた4項目(I. ZCC合成シミュレーション,II. 水素同位体混合吸着シミュレーション,III. ZCC合成装置開発・ZCCキャラクタリゼーション,IV. 水素同位体吸着実験・装置開発)の内,IおよびIIは遅延無く実施し,計画項目をほぼ達成している。一方,H26年度に予定していたIIIのZCC合成装置の開発については,既存実験装置によるZCCの合成を先行させ,本実験結果をもとに,H27年度において新規装置の設計・製作を行うこととした。また,同じくH26年度に予定していたIVの水素同位体吸着実験装置の開発については,当該年度に装置製作を開始したが,H27年度に完成する見込みである。
H26年度に引き続き,下記I-IVの実施を継続する。H27年度前半までにサイクル(I→II→III→IV→I)を確立させる。このサイクルの確立によって,実験III,IVで得られたデータを分子シミュレーションIおよびIIにフィードバックし,シミュレーション精度の向上を図ることを可能とする。I. ZCC合成シミュレーション:炭素原子間相互作用としてreactive state summation(RSS)ポテンシャルを用いたMDシミュレーションコードによって,数十種類のゼオライトを対象とするZCCの合成シミュレーションを行う。これにより,細孔径0.3 nmの極微細孔を有するサブナノ多孔体が創製されるような諸条件(ゼオライト種,有機分子種,反応温度等)の予測を行い,以下のIIIにおけるZCC合成実験の最適化をはかる。II. 水素同位体混合吸着シミュレーション:FeynmanのPI法をGCMC法に適用したPI-GCMCシミュレーションコードによって,平衡論に基づいた各ZCCモデルの重水素選択率評価を行うと共に,リングポリマーMD(RP-MD)法に基づくシミュレーションおよび遷移状態理論を用いることで,速度論に基づいたZCCモデルの重水素分離特性評価を行う。III. ZCC合成装置開発・ZCCキャラクタリゼーション:ZCCの合成・キャラクタリゼーションを行う。IV. 水素同位体吸着実験・装置開発:実験IIIにより得られたZCCへのH2およびD2吸着等温線測定を行う。
H26年度に製作を予定していた新規CVD装置によるZCC合成を既存装置により行い,その実験結果をもとに新規CVD装置を設計・製作することとしたため。
上述のCVD装置の制作費に充てる。
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J. Phys. Chem. C
巻: 119 ページ: 印刷中
10.1021/jp512870p
Faraday Discuss.
巻: 173 ページ: 145-156
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http://www.cheme.kyoto-u.ac.jp/2koza/index.html