本研究では,「量子分子篩」による水素同位体分離に最適な極微細孔を有するゼオライト-炭素複合多孔体(ZCC)を創製し,高効率な重水素分離プロセスの設計を可能とすることを最終目的とした。すなわち,化学気相成長法により10-18員環といった中-大細孔を有するゼオライトの細孔内を熱分解炭素で被覆・修飾することで高い重水素選択性を実現することを目指し,以下の4項目を柱とする研究を実施した。I. ZCC合成シミュレーション:ZCCの合成・探索を効率的に行うために,ZCCの合成シミュレーション・分子モデリング手法を確立し,コンピュータシミュレーションによる大規模な「仮想実験」を行なう。II. 水素同位体混合吸着シミュレーション:量子分子篩の平衡論/速度論的理解を可能とするための分子シミュレーションコードの開発を行い,混合吸着等温線測定および破過曲線測定等の実験結果と比較・検討することで,ZCCの重水素分離特性を明らかとする。III. ZCC合成装置開発・ZCCキャラクタリゼーション,IV. 水素同位体吸着実験・装置開発。本研究期間中において,分子動力学法を用いたゼオライト-炭素複合多孔体(zeolite-carbon complex: ZCC)合成の計算機実験を行い,30種類のゼオライトから種々の炭素導入量を持つZCC(200種類)を得た。そして,各ZCCモデルを用いたグランドカノニカルモンテカル法によるH2/D2混合吸着シミュレーションおよび遷移状態理論計算(温度77 K)によって独自のrapid vacuum pressure swing adsorptionプロセスを構想し,AFIゼオライトを用いたAFI-ZCCならば高いD2分離特性が得られることを明らかとした。
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