本研究では、半導体粉末上に2種の金属成分を含むナノ粒子を光化学的に析出させたコンポジット材料を調製し、未だ解明されていない(1)複合金属成分ナノ粒子の光化学的合成に関する基礎的知見の取得、(2)水素/酸素生成光触媒としての応用、(3)走査型プローブ顕微鏡を用いたコンポジットの電荷分離状態の直接観察を目的としている。 平成25~26年度の研究で、固相法で調製したチタン酸ストロンチウム(SrTiO3)を半導体光触媒として、Crとの同時光析出を可能とする遷移金属種の集中的探索を行った結果、新たにAuやPdなどでもCrとの同時析出法が可能なことを見出した。本年度は、特異的な挙動を示したPd/Cr系について詳細な検討を行い、Cr前駆体濃度などの調製条件を変えた場合のPd/Crナノ粒子の電子状態、形態の変化と、その結果としてもたらされる水素生成の助触媒能との関係を明らかとした。また、Pd/Crナノ粒子が光析出するメカニズムを種々の実験結果から考察した。 さらに本年度においては、これまで検討してきた水素生成系助触媒に加えて、水の酸化による酸素生成を促進する助触媒の探索研究も行った。その結果、同様な同時光析出法を用いて得たFe/Cr系ナノ粒子が水の酸化反応を促進する助触媒となることを明らかとした。Fe、あるいはCr単独では反応促進効果は得られず、FeとCrを複合化することが重要であると結論した。
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