研究課題/領域番号 |
25709080
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
白石 充典 九州大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (00380527)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | G蛋白質共役型受容体 / 出芽酵母 / 安定化 |
研究実績の概要 |
本研究では本質的に調製が困難であるGPCRについて、分子進化工学的手法および出芽酵母のシグナル伝達系を利用することで、本来の機能を保持しかつ安定性と発現量を高めた改変体を創出するシステムの構築を行う。さらに構造解析および相互作用解析に向け、受容体蛋白質を活性を保持した状態で大量調製する技術の確立を目的とする。 今年度は、GPCR_Aの結晶構造解析を目指し、GPCR_Aの安定化改変体の大量調製系および精製方法の確立を行った。ピキア酵母で高発現が見られたカルチャーバッグを用いた培養システムを構築し大量培養を試みた。しかしながら最大発現量が2Lフラスコの3分の1程度に低下することがわかった。精製したGPCR_Aを用いて、結晶化に最適な(受容体を最も安定化する)リガンドの探索を、CPMアッセイにより行った。アゴニスト2種類、アンタゴニスト4種類の中から、受容体の熱安定性を20℃近く安定化するリガンドA(アンタゴニスト)を見出した。精製した受容体とリガンドAの複合体を用いて、キュービック相結晶化法により結晶化を試みた。今年度は異なる精製条件で精製した受容体蛋白質について結晶化を数回試みているが、未だ結晶構造解析が可能な結晶は得られていない。また等温滴定型カロリメーターを用いて受容体とリガンドの相互作用を確認した。さらに、多数の変異体を作製し本スクリーニングシステムにて評価することで、活性を保持した状態での発現量をさらに2倍向上させる変異を見出した。 また今年度は、酵母を用いたスクリーニングシステムのバリデーションを行った。本スクリーニングシステムのウェル間誤差が小さいこと、またこれにより安定性に重要な改変を逃さずに評価することが可能であることを実証した。また本システムがセミランダム変異導入などの大規模な変異体スクリーニングに利用できることを、GPCR_Bを用いて実証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
出芽酵母を用いた96ウェルプレート形式でのスクリーニングシステムの構築については、最適化を経てほぼ確立している。モデル蛋白質を用いたバリデーションを行い、本システムが信頼性が高いこと、またセミランダム変異や融合タンパク質の組み合わせの最適化など、大規模な改変体の作製・評価に対して威力を発揮することを実証できた。加えてGPCR_Aに関しては高発現・安定化した改変体を作製し、機能を保持した状態で大量調製のための培養条件、精製方法を行った。GPCR_Aについては結晶化に供することのできるレベルに大量調製を行うことができ、複合体を形成する際のリガンドの最適化を行い、結晶化も試みている。またGPCRを高発現、安定化しうる因子についても見出している。よって機能を保持し高発現で安定化したGPCRを創出するという点では計画以上の進展がある。今年度は前述の事項に注力したこともあり、出芽酵母のシグナル伝達系を利用したスクリーニングシステムは構築できているものの、ここからは有望な変異体がまだ得られていない。これらを総合的して、本研究は概ね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
GPCR_Aについては、現在大量調製、結晶化を試みている。今年度に新たに作製した変異体は従来の変異体よりも発現量、活性が向上しており、来年度はこの変異体について大量調製、結晶化を行う。もし現在の発現、精製方法で良好な結晶が得られないような場合は、発現系の変更(昆虫細胞)に向けた準備を平行して進める。本課題の期間中にGPCR_Aの結晶構造解析ができるようにまたGPCRのスクリーニングシステムに用いる独自の酵母株の作製を継続しておこなう。具体的にはGPCR発現時の分解を抑えるため、PEP4遺伝子を破壊した新規酵母株を作製し、スクリーニングに供する。GPCR_Aは細胞内ループに融合タンパク質を導入しないと、不安定で発現が低い。そのためGPCR_Aにランダム変異を導入し、本システムでのスクリーニングを進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
機器や試薬などが当初予定よりも安価に購入することができたことが挙げられる。
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次年度使用額の使用計画 |
研究を加速させるための物品、人件費、受託解析の利用などに充てる。
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