研究実績の概要 |
今年度は、出芽酵母を用いた96ウェルプレートでの発現・物性評価系のバリデーションを、アデノシンA2a受容体を用いて行った。本評価系のウェル間誤差は5%と小さいことを示した。また本評価系が他の膜タンパク質に対しても適用できることを、酵母由来膜タンパク質4種(Hxt3, Vgr4, Ssh1, Dur3)を用いて示した。 またこれまでGPCR_Aの結晶構造解析を目指し、GPCR_Aにシトクロムb562変異体(BRIL)を融合した改変体の結晶化を試みてきたが、X線回折実験に適した結晶が得られていない。そこでGPCRの細胞内第3ループ部分に融合する蛋白質として、好熱菌由来グリコーゲン合成酵素(PGS)を採用し、融合蛋白質の設計、出芽酵母を用いた融合蛋白質の発現・評価を行った。2通りの融合パターンで安定化が確認され、これらを基に大量調製に向けた改変体の構築を行った。また計算科学を利用し、2箇所において塩基性アミノ酸に置換することで安定性の向上が見られた。これら2箇所の変異は受容体を不活性型に安定化するものであった。これらの変異に加えて、これまで申請者が見出してきた安定化変異を組み合わせ、これまでよりも発現量が向上した改変体4種類(BRIL融合活性型、BRIL融合不活性型、PGS融合活性型、PGS融合不活性型)を作製した。 出芽酵母を用いた大量培養において、今年度は培養の条件を最適化することで、単位培地あたりの発現量を2倍に向上することに成功し、スクリーニング時の発現効率を維持したまま、単位培地あたりの収量を5倍以上向上させることができた。上記の4つの改変体を精製し、等温滴定型カロリメーターによるリガンド結合、CPMアッセイによる受容体の熱安定性測定を行い、結晶化に十分な物性を保持していることを確認した。
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