研究課題
火力や原子力等の既存の方法に代わる、クリーンで安全かつエネルギー効率の高い発電機の開発は急務である。そこで近年、生物機能に着目し、酸化還元酵素を利用したグルコースのみで発電するバイオ燃料電池が開発されているが、従来の発電法に比べて出力性能に劣る。一方、本提案では、強力な電気を発生する器官を有する電気魚に着目し、その生体特有の高機能な構造を直接組み込んだ高機能なATP発電機を実現することを着想した。そのためには、シビレエイの発電機構のデバイスへの集積化が必須である。以上をふまえ、本研究の目的は、ナノ・マイクロ加工技術を用いて集積化したシビレエイ発電機構をベースとした発電機の創成とした。当該年度は、これまでに実証した、物理刺激によるシビレエイ発電の結果をベースに、シビレエイ個体から取り出した発電器官を用いて、これに直接神経伝達物質の一種であるアセチルコリン溶液を注入することで化学的な手法で人為的に発電させる手法を確立した。取り出した電気器官は、人工脳髄液ACSF中で一時保存し、これを導電布で挟み込んで上下それぞれに電極を繋いだ。ここに、上からシリンジ針を刺し、シリンジから手動操作で薬液を注入したところ、最大で100 mV程度の電圧、0.2 mA程度の電流が得られ、かつアセチルコリンの入っていない液を注入しても藩王がなかったことから、この発生電力は電気器官の薬液との反応によることが示され、化学刺激コントロール型発電システムの基礎原理が実証された。
1: 当初の計画以上に進展している
当該年度は、シビレエイの電気器官への化学刺激のみで発電させることが可能となった。当初の想定では、生きた電気器官をある程度バイアビリティーを確保したまま発電させることは難しいと考えており、器官の一部のみを取り出すことを計画していたため、それに比べれば器官丸ごとははるかに高い出力性能が得られていると考えられ、その観点で、当初の目的以上に進展がみられたといえる。
今後は、当該年度の成果に基づき、シビレエイの電気器官を利用した発電機のデバイス化へと移行し、具体的な発電機の作製に向け、デザインを詰める。その際、今回の検討の結果で得られた発電特性である、数秒レベルの比較的長い発電時間を十分に考慮する。また、直列・並列などの様々な形状にデバイスを設計し、どのように発電特性が変化するかを検証する。またデバイスの素材を検討し、発電器官の形状・機能の保持とともに、発電特性を最大限高め、かつ制御性の高いシステムになるように設計試作する。
当該年度は、研究が想定以上に進展し、発電器官丸ごと使用することにより、当初計画していた、細胞膜のみを取り外して使用する必要性がなくなり、その分に使用する予定であった研究費の未使用分が発生した。
未使用分4,158,380円は、研究を加速し、より高性能かつロバストなデバイスを開発するための物品費としてシビレエイ他、試薬や実験器具などの消耗品として1,000,000円、学会参加や打ち合わせ等のための旅費として500,000円、実験員等の人件費として2,500,000万円、学会登録費などその他として158,380円を計画している。
すべて 2015 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 5件、 招待講演 2件) 備考 (1件)
Proceeding of IEEE Transducers 2015
巻: 1 ページ: 1782-1785
巻: 1 ページ: 2136-2139
http://www.qbic.riken.jp/ibd/jpn/