本研究課題では耐損傷性の問題から十分な軽量化にいたっていない複合材航空機構造を対象に、大幅な重量低減を目標とした検討を行うことを目的としている。具体的にはこれまで構築してきた階層型光ファイバ損傷検知システムを損傷検知・修復ハイブリッドシステムに発展させるとともに、独自の急速補修技術と融合させて構造に適用することで、設計許容ひずみレベルを向上させることを試みる。損傷検知・補修融合技術を適用することで初めて可能になる革新損傷許容設計法に基づく供試体を作製し、従来構造との強度比較実験を通して融合技術による重量低減ポテンシャルを目に見える形で示す。 上記目標の達成に向けて、平成28年度はまず階層型システムの機能向上のために、閉塞に対するロバスト性や損傷修復性、さらには母材力学性能への影響に課題のあった面内方向流路から厚さ方向複数流路へと発展させた。流路を導入した試験片の引張強度および損傷進展過程のX線CT観察から流路導入方法の妥当性を確認するとともに、修復剤に急速硬化可能な高靭化シアノアクリレートを用いることで短時間で母材以上の強度を回復可能であることを実証し、従来の面内方向流路に対する優位性を明らかにした。最終的には衝撃後圧縮荷重を受けるスキンストリンガ供試体に適用し、強度を90%まで回復可能であることを示した。以上により、提案する革新損傷許容設計法の重量削減ポテンシャルを示すことに成功した。
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