研究課題/領域番号 |
25709086
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研究種目 |
若手研究(A)
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
宮本 光貴 島根大学, 総合理工学研究科(研究院), 准教授 (80379693)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | プラズマ表面相互作用 / ベリリウム / 微細組織 / 電子顕微鏡 / 水素保持特性 / 照射損傷 |
研究概要 |
現在建設が進む国際熱核融合実験炉(ITER)のプラズマ対向材料にはベリリウムの使用が予定されているが,ベリリウムに関するプラズマと材料との相互作用(PSI)については,その取り扱い上の問題から,実験的研究は立ち遅れている.そこで,本研究ではベリリウム共存下でのPSI 研究に焦点を絞り,制御された系における複合イオン照射実験を行い,水素リサイクリング挙動と原子レベルでの損傷組織形成過程の詳細に調べる事を目的としている. 研究初年度に当たる平成25年度は,ベリリウムを用いた一連の実験を想定し,すべての工程で生じうる安全上の問題を網羅的にチェックし,次年度以降の本格的な運用のための準備を主要な課題として実験研究に取り組んだ.予備実験として主に様々な条件下でヘリウムイオン照射およびヘリウムプラズマ曝露したタングステン試料の組織観察を行い,以下の成果を得ている. (1)試料薄膜化装置(イオンスライサー)を導入し,まずはベリリウムを含まない試料を用いて,透過型電子顕微鏡観察可能な薄膜試料を安全に作成できるよう手順を確立した. (2)ヘリウムプラズマに曝したタングステン中のヘリウムバブル形成挙動を系統的に評価し,バブルの深さ分布,密度,サイズなどを照射量,および照射温度の関数として詳細に調べた. (3)ヘリウム高照射下で問題となるプラズマ対向材料表面の繊毛状組織(「ファズ」や「ナノ構造」と呼ばれる)の形成について,イオン照射装置直結型の透過型電子顕微鏡を用いてその発達過程をその場観察し,形成のメカニズムや条件に関する知見を得た.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究で取り扱うベリリウムは,その粉塵やヒュームを吸入すると呼吸器の障害による人体への影響が生じることが指摘されており,電子顕微鏡観察のための薄膜化加工には,十分な安全策を講じる必要がある.そのため,初年度は,薄膜化加工に必要なイオンスライサ及び前処理のための周辺機器を導入し,まずはベリリウムを含まない環境下でイオン照射およびプラズマ曝露した試料の表面特性分析を行い,一連の工程で生じうる安全上の問題を網羅的にチェックした.現状では,解決すべき問題などは生じておらず,ほぼ,当初計画の通り進展している.
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今後の研究の推進方策 |
研究期間2年目からは,ベリリウムおよびベリリウムを含有(堆積)した試料の取り扱いを開始する.十分な安全を担保するために大型の真空グローブボックスを新たに導入し,実験者と試料を完全に切り離した状態でイオンスライサを用いた試料の加工を行う.これにより,照射したベリリウム試料の損傷の深さ分布に関する情報を原子レベルで捉える事が可能になる. 本格的な運用前には,一連の作業中における環境濃度測定を第3者機関に依頼し,十分な安全が確認された上で,実験を行う予定にしている.
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次年度の研究費の使用計画 |
当初購入を予定していた一部の物品購入を見送ったほか,可能な範囲で安価な物品の選定や旅費の削減などの自助努力を行ったため,次年度使用額が生じた. 26年度購入予定の大型グローブボックスは,特注品であり,安全確保のために費用の許す範囲で可能な限りの改良を施す予定である.また昨年度未購入であった物品の購入も予定している.
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