現在建設が進む国際熱核融合実験炉(ITER)では,プラズマ対向材料としてベリリウムの使用が予定されているが,ベリリウムに関するプラズマ-材料相互作用(PSI)に関しては,その取り扱い上の問題から実験的研究が遅れている.そこで,本研究ではベリリウム共存下でのPSI 研究に焦点を絞り,制御された系における複合イオン照射実験を行い,水素リサイクリング挙動と原子レベルでの損傷組織形成過程を詳細に調べる事を目的としている. これまでに本事業を通してベリリウム含有試料を安全に取り扱うことが可能な特製グローブボックスや薄膜化加工装置等を整備しており,当該年度は,本装置により調整したベリリウムバルク試料を主に用い,その特性評価を行った. 透過型電子顕微鏡(TEM)内におけるイオン照射,および昇温下の動的微細組織変化のその場観察においては,重水素,およびヘリウム照射のそれぞれにおいて欠陥の形成や回復の挙動を系統的に調べた.特に,両照射において形成されるバブルの回復挙動に明瞭な違いがあることを,動的その場観察により明確に示し,ガス放出挙動との関連を明らかにすることができた.また,カリフォルニア大学サンディエゴ校の直線型高密度プラズマ発生装置を用いたプラズマ曝露実験では,高密度プラズマに曝した試料の断面TEM観察から,特異なコーン状組織の形成を観察し,その形成機構に関する知見を得た. 今後は,得られている成果の取り纏めと発信を行うとともに,本研究で培ったベリリウム含有試料の取り扱い技術やベリリウム薄膜の特性評価の取り組みを発展させ,プラズマ対向材料としてのベリリウムの特性評価への取り組みを計画している.
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