研究課題
本研究期間で明らかにし、達成するのは、下記の2点である。1.添加する元素のK吸収端と検出対象エネルギーとを対応させることにより、20~100 keVのエネルギー領域をカバーするテイラーメイドシンチレータを開発する。これにより、エネルギー選択性を持ちながら、高検出効率にてX線を検出可能な高速シンチレータ材料を開発する。2.ナノメートルサイズで相分離したシンチレータにおけるシンチレーション特性を包括的に解明する。入射放射線とシンチレータ中の原子との相互作用による二次電子発生から発光に至るまでの過程をモデル化し、このモデルを通じた材料設計指針を得る。このような目標に向けて、今年度の材料開発を進めた。具体的には、ナノメートルサイズのハフニウム系酸化物が、ポリスチレンをベースとしたプラスチックシンチレータに分散している構造を形成した。ゾルゲル法による手法では、昨年度に引き続き、材料合成を行い、昨年度の1.5倍の導入量の達成に成功した。また、厚さについても、3 mm以上のものの合成に成功した。これにより、核共鳴散乱実験など、検出器(シンチレータの部分)の体積の必要な用途への展開が可能になったといえる。今年度の開発で特筆すべきなのは、表面修飾されたハフニアのナノ粒子を、超臨界水中での水熱合成により形成し、それをプラスチックシンチレータへと分散させたものについて、市販の高エネルギー光子検出用のプラスチックシンチレータを凌駕する性能を達成したことである。また、同様の用途で利用可能な、ジルコニアのナノ粒子の合成にも正孔したため、来年度早々にも、ジルコニア分散プラスチックシンチレータの開発が可能となった。
1: 当初の計画以上に進展している
今年度の終了時には、超臨界合成によるナノ粒子添加シンチレータの合成では、1種類(当初予定していたハフニア)のみを添加できれば十分であると考えていた。しかし、尾今年度中に、表面修飾したジルコニアのナノ粒子の大量合成にも成功した。そのため、当初の計画以上に研究が進展していると判断した。
来年度においては、今年度に合成に成功したジルコニアナノ粒子を添加したプラスチックシンチレータを開発する。このことにより、20~30 keV程度でのX線検出を得意とする材料合成が可能となる。また、原子番号にして50あたりの元素の酸化物ナノ粒子も合成し、おおよそ20~80 keVのX線に対する検出特性の異なる3つのシンチレータを合成したい。
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Sensors and Materials
巻: 27 ページ: 255-261
Applied Physics Letters
巻: 104 ページ: 174104-1 - 5