研究課題/領域番号 |
25710006
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
村松 里衣子 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (90536880)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 血管新生 / 多発性硬化症 / 神経細胞 / 軸索 |
研究実績の概要 |
脳と脊髄からなる中枢神経系が傷害されると、病巣では新たな血管の増生が認められる。この血管新生を呼ばれる現象は、組織の修復に必要であると考えられているが、中枢神経傷害後の血管新生のメカニズムには不明な点が多い。研究代表者ら中枢神経傷害後の血管新生が、傷ついた神経に由来する物質によって導かれるという仮説をたてた。本課題では、神経細胞に含まれる血管新生促進因子の同定を行っている。 血管新生には、血管内皮細胞の増殖が必要である。これまでの検討で、傷ついた脳組織を模擬する脳組織抽出液に、血管内皮細胞の増殖因子が含まれることを見出した。また、生化学的な手法を組み合わせて、血管内皮細胞の増殖活性を含む脳組織抽出液フラクションの分画に成功し、さらにその分画に含まれる成分を質量分析により解析した。含まれる成分について、血管内皮細胞の増殖活性があるかを網羅的に探索した。その結果、通常は細胞内に含まれているが、細胞が傷ついた際に細胞外に放出する、新規血管新生因子の同定に成功した。同定した因子の細胞内シグナル伝達機構についても解析を実施した。さらに、同定した因子の生体内での発現パターンを免疫染色のより解析した。その結果、得られた分子は大脳皮質に豊富で、また特に大脳皮質第5層の神経細胞に豊富に発現していること、一方でオリゴデンドロサイトやアストロサイトでの発現は高くないことを見出した。今後、神経細胞特異的に同定因子の発現を抑制させたマウスにおいて、中枢神経傷害後の血管新生が抑制されるか検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
多くの候補分子の中から、活性をもつ分子の同定に成功すると共に、その分子の発現パターンの解析まで終了したため。
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今後の研究の推進方策 |
同定した分子のin vivoでの働きについて検討する。具体的には、多発性硬化症の実験動物モデル(experimental autoimmune encephalitis, EAE)の病巣を局所に誘導したマウスを作出し、そのマウスにおいて神経から漏れ出る同定分子が血管新生を促進させる働きがあるかを解析する。神経細胞で同定因子の発現を抑制される処置を施したマウスにEAEを誘導し、その後におこる新生血管の形成を組織学的に解析する。さらに、同定した分子の働きがEAEに特異的な現象ではないかを検討するため、脳挫傷モデル(controlled cortical impact)における血管新生に対する同定因子の作用についても検討する。 同定した因子による血管新生効果が個体レベルの表現系に対しても働きうるか検証する。脳腫瘍モデルマウスでは、腫瘍周囲の血管新生によって腫瘍の増悪化が導かれ、生存率の低下を導くことが知られている。同定した因子の働きを抑制させたマウスでは、生存率の低下が抑制されるか、観察する。
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