研究課題
本研究では、候補分子スクリーニングおよびプロテオミクス解析により新規シトルリン化基質の同定を網羅的に行い、さらに基質同定後は、修飾によるタンパク質の機能変化及びその生理的意義について解析を進めていく事を目的としている。本年度は、プロテオミクス解析により同定されたシトルリン化ペプチドの配列情報を用いて、修飾を受けるアルギニン残基の前後配列にどのような特徴があるか検討した。その結果、酸性アミノ酸と一部の極性アミノ酸が周辺に多いことが明らかとなった。そこで、シトルリン化修飾におけるコンセンサス配列に対してシトルリン化抗体の作製を試みた。また、アルギニン残基はメチル化修飾も受けうることから、メチル化とシトルリン化の両修飾の関係性について検討したところ、両修飾が同一アルギニンに対して競合している可能性が、in vitroおよびin vivoの実験にて示唆された。前年度に行ったRNA sequenceの結果を解析し、PADI4がSplicingに関与するか検討した。その結果、10遺伝子について、Padi4野生型マウスとノックアウトマウス間で、骨髄におけるvariantの発現パターンが異なることが明らかとなった。また実際に、リアルタイムPCRにて、骨髄におけるPADI4 mRNAの発現がマウス24組織中で最も高いことが示され、さらにWestern blottingにて骨髄でのPADI4タンパク質の発現を確認した。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画にある項目に関して、解析が無事に終了している。RNA sequenceの解析も完了し、PADI4がSplicingに関与する事が示された。プロテオミクス解析により同定されたシトルリン化基質群を用いたPathway解析によっても、PADI4のSplicingへの関与が示唆されており、結果に矛盾はないと考えられる。さらに、以前より注目されていたシトルリン化とメチル化の競合性について、新たな知見を得ることができた。こちらに関しては、今後さらに解析を行う予定である。
平成26年度は、質量分析による網羅的解析の結果得られたシトルリン化ペプチド群の配列を用いて、シトルリン化修飾のコンセンサス配列を導き出した。さらに、そのモチーフに対するシトルリン化抗体を作成した。これらの成果を元に、平成27年度は以下の解析を行っていく。a)in vivoにおけるシトルリン化の検討b)シトルリン化部位の決定と特異的抗体の作成c)基質タンパク質にシトルリン化修飾が及ぼす影響の解析a)およびb)については、作成したシトルリン化モチーフ抗体を用いて、生理的条件下でのシトルリン化を検討する。U2OS細胞にDNAダメージを与えた系に加え、マウス臓器の中で最もPadi4の発現が高い骨髄を用いて、この検討を行う。実験としては、Western blotting、免疫染色などを予定している。また、シトルリン化モチーフのペプチドを作成し、リウマチ、癌などの患者血清中に、シトルリン化モチーフに対する抗体が存在するかどうか検討する。c)については、シトルリン化モチーフを持つ基質候補群に関して、各タンパク質の機能に沿った解析を行っていく。多くのタンパク質がRNA結合タンパク質であることがわかっている。そこで、どの段階のRNA processingの過程に関わっているかを検討予定である。また、PADI4遺伝子領域内の一塩基多型について、バイオバンクジャパンに登録されている13の癌種について約1000例ずつ用いて、遺伝子型の決定をInvader法により行う。その後、統計解析を行い各多型が疾患発症に関与するか検討する。これらの解析によって、PADI4を介したシトルリン化の発癌における意義について明らかにすることが可能となる。
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