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2013 年度 実績報告書

DNA複製フォークの修復機構におけるMUS81とRecQの機能の解明

研究課題

研究課題/領域番号 25710010
研究種目

若手研究(A)

研究機関大分大学

研究代表者

花田 克浩  大分大学, 医学部, 助教 (90581009)

研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2016-03-31
キーワード分子生物学 / 染色体不安定性 / 組換え / DNA修復
研究概要

平成25年度は、ファンコーニ貧血症患者由来の細胞を用いた解析を行った。MUS81やRecQを中心としたDNA複製フォーク修復機構の活性に関して遺伝子変異細胞を用いて検証した。MUS81の活性に関しては、染色体切断活性の検出を中心とした解析を行った。その他の関連因子(RecQなど)に関しては、免疫蛍光染色法による細胞内局在等の解析を行った。これらの解析を組合わせて、ファンコーニ貧血症の原因遺伝子産物が、DNA複製フォーク修復に関して、どのように貢献しているか検証している。
細胞レベルでの知見をより深く理解するために、分子レベル(精製タンパク質レベル)での検証も行った。ファンコーニ貧血症の原因遺伝子の1つであるFANCD2タンパク質を精製して、FANCD2タンパク質が他のDNA修復関連酵素を活性化するか、精製タンパク質を用いて検証した。また、DNA複製の修復に関与するFBH1タンパク質について、デンマークのIan Hicksonのグループとの共同研究で、その生化学的機能を明らかにすることが出来たので、彼らとの共著論文として報告した。
また、ダメージを受けたDNA複製フォークの修復に関わる新規の遺伝子を同定するために、染色体不安定性を示す遺伝子疾患を有するヒト患者由来の細胞や、候補遺伝子を人工的に破壊した遺伝子組換えマウスES細胞を入手することに成功した。現在、DNA複製阻害剤を投与してDNA複製フォークにダメージを与えた後、どのような表現型を示すか解析している段階である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

平成25年度は、まずファンコーニ貧血症患者由来の細胞を用いて、その原因遺伝子産物がDNA修復にどのように関与するか明らかにすることを目標としていたので、その部分に関してはおおむね順調に研究が進んでいる。また、その研究から、当初想定していなかった新規の因子を数種類発見したことから、それらの機能に関しても解析を行うことにした。ファンコーニ貧血症関連因子とこれら因子との関連性を検証する必要があるため、もうしばらくファンコーニ貧血症患者由来の細胞を用いた研究を継続する予定である。
これに関連したタンパク質の精製についてもおおむね順調であるが、いくつかのタンパク質の精製が難しく、苦労している。精製に成功したものあることから、達成度は80%ほどと考えている。
一方、新規の関連遺伝子を発見するために、原因遺伝子が明らかになっていない染色体不安定症候群(染色体異常を多発する遺伝子疾患)の原因遺伝子の同定を試みている。しかし、この点に関しては、大分大学のヒトゲノム研究倫理委員会の承認が遅れたため、細胞の入手が予定より遅れた。しかし、必要な細胞は平成25年度内に入手しており、平成26年度から原因遺伝子の探索を本格的に実施する。

今後の研究の推進方策

今後は、上記の研究を継続して行い、まず、ファンコーニ貧血症関連遺伝子とMUS81やRecQとの関連性について明らかにしたいと考えている。また、本研究の解析からDNA複製フォークの修復に関与している可能性が疑われるいくつかの因子に関して、その関連性の有無を理解する。関連すると判定された場合、どのように作用するか、その分子メカニズムを解明していきたい。細胞レベルの解析方法としては、マウスES細胞やヒト培養細胞を用いて遺伝子破壊を行い、DNAダメージ導入後、実際にDNA複製フォークの修復に関与しているか検証する。細胞レベルでの解析では不十分と判断された場合、ノックアウトマウスを作製し、既存のマウスと二重変異体を作製することで、MUS81、RecQ、ファンコーニ貧血症関連遺伝子との関係について解析する。
また、今後も関連酵素のタンパク質精製を継続して行い、細胞レベルの知見と分子レベル(精製したタンパク質の活性)が一致するか解明していきたいと考えている。
また、染色体不安定症候群患者由来の細胞から、DNAを抽出して次世代シーケンサーなどの解析から原因遺伝子を同定し、その遺伝子の機能についても解析していく。どんな遺伝子が同定されるか分からないが、見つかった遺伝子がコードするタンパク質の活性を生化学的に解析していく予定である。

次年度の研究費の使用計画

平成25年度の予算の一部が次年度の使用になってしまった理由として、
1つ目は、本学のヒトゲノム研究に関する倫理委員会の承認を得る作業が予定よりも大幅に遅れてしまい、ヒト遺伝子疾患由来の細胞の入手が遅れてしまったことが挙げられる。これにより、ゲノム解析の受託研究費として計上していた予算を執行できなかった。その受託研究費分が、「その他」の予算に80万円を残す原因となった。2つ目は、上記の細胞入手が遅れたために、血球細胞を解析するために購入を予定していたサイトスピン(120万円の機器)を購入する必要が生じなかったことが挙げられる。3つ目として、実験補助を雇ったが、従事者の年齢が若かったことにより、想定の時給より安い給与で雇用することになったことが挙げられる。これにより、約60万円の経費が残ることとなった。
以上の3点から、約260万円の予算が残った。
昨年度に執行できなかった予算については、今年度は、ゲノム解析や変異細胞の作成に関する経費(物品費および受託解析費)に充てる予定である。疾患原因遺伝子に関しては、既に当該細胞の一部は入手しているので、当初の計画通り受託解析にて解析を行う。さらに、いくつかの興味深い細胞が購入可能な状況にあるので、その細胞を購入して解析する費用に充てる予定である。
また、タンパク質精製に関するエフォートが増えてきたことから、今年度はタンパク質精製の効率を高めるために低圧液体クロマトグラフィーを購入したいと考えている。その経費として利用したい。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2013

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)

  • [雑誌論文] FBH1 helicase disrupts RAD51 filaments in vitro and modulates homologous recombination in mammalian cells.2013

    • 著者名/発表者名
      Simandlova J, Zagelbaum J, Payne MJ, Chu WK, Shevelev I, Hanada K, Chatterjee S, Reid DA, Liu Y, Janscak P, Rothenberg E, Hickson ID.
    • 雑誌名

      Journal of Biological Chemistry

      巻: 288 ページ: 34168-34180

    • DOI

      10.1074/jbc.M113.484493.

    • 査読あり

URL: 

公開日: 2015-05-28  

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