研究課題/領域番号 |
25710011
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
向井 英史 国立研究開発法人理化学研究所, ライフサイエンス技術基盤研究センター, 上級研究員 (60570885)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | PETイメージング / ナノ粒子 / セラグノーシス |
研究実績の概要 |
本研究では、各種ナノ粒子などを担体とする親和性リガンドの多量体化を基本として、標的集積性とクリアランスの点を考慮したPETプローブの設計原理の把握を目的の一つとしている。まず、昨年度に引き続き、ウロキナーゼ(uPA)静脈内投与による樹状PEG修飾64Cuボンベシンアナログテトラマーのスイッチング型腎クリアランスを意図したPETプローブについて、PET試験の詳細な解析を行った。腫瘍組織の放射活性は、期待通りuPA投与/非投与に関わらず同じレベルで維持されており、uPA投与群では非投与群と比較してT/Bが有意に向上した。このことから、uPAとその酵素認識配列を活用したスイッチング型のクリアランス促進により腫瘍集積性を低下させることなく画像コントラストの向上に成功した。また、Y型核酸構造モチーフを応用した多点認識型PETプローブの作製において、天然型のホスホジエステルやホスホロチオアート型のDNAを用いると強い負電荷のため非特異的な細胞取り込みが有意となることが分かり、これを避ける戦略として電荷を持たないモルフォリノ型核酸を用いたY型核酸構造ボンベシンアナログPETプローブの作製に成功した。本PETプローブは、ボンベシンアナログ依存的な標的細胞取り込みを示した。今後、抗体のマルチモーダル化などへの展開を計画している。また、がん細胞に対し高い親和性を持つペプチドリガンドの取得を目的に、大腸菌表面ディスプレイを利用した系を立ち上げ、スクリーニングを進めている。加えて、セラグノーシスへの応用のためには、PET試験により薬物の集積を確認した後に、腫瘍組織選択的に薬物放出を促進するシステムが有効である。その一例として、アップコンバージョンナノ粒子を応用したシステムを作製し、その動態特性や薬物放出機能について評価を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度に予定していたがん細胞に対し高い親和性を持つペプチドリガンドの取得については、系の確立においてトライアルアンドエラーが必要でありそれに時間を要したため、スクリーニングは現在実施中である。しかし、その分、次年度に予定していたセラグノーシスへの応用として、アップコンバージョンナノ粒子に基づくシステムの作製を並行して進めた。以上のことより、総合的に判断して、本研究はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、がん細胞に対し高い親和性を持つペプチドリガンドの取得のためのスクリーニングを進めながら、ナノ粒子型PETプローブのセラグノーシスへの応用を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究の進捗の兼ね合いで、がん細胞に対し高い親和性を持つペプチドリガンドの取得について、次年度も引き続き実施することとしたため。
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次年度使用額の使用計画 |
がん細胞に対し高い親和性を持つペプチドリガンドの取得に関する実験を実施するための消耗品費として使用する予定である。
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