研究課題
若手研究(A)
本研究では、固形がんにおける予後予測診断システムの構築を最終目的とした、がん幹細胞様細胞とその微小環境のプロテオミクス解析を行う。はじめに、ホルマリン固定されたがん細胞株を用いて、タンパク質抽出法及びLC-MS解析の最適化を行う。その後、患者由来の大腸がんFFPE組織切片を用いてプロテオミクス解析を行う。がん幹細胞及びその周辺組織で発現変動が確認されたタンパク質を候補分子とする。次に、がん細胞株を用いて候補分子群の機能解析を行う。その後、単一細胞解析によって候補分子群によって分化/脱分化を引き起こす細胞集団の分離を試みる。最後に、がん幹細胞の分布とその周辺組織で高発現しているタンパク質または遺伝子群の分布パターンから予後不良または良好となるパターン抽出を試みる。今年度は、はじめにホルマリン固定されたがん細胞株を用いて、タンパク質抽出法及びLC-MS解析の最適化を行った。レーザーマイクロダイセクション(LMD)で切り出されたFFPEサンプルから、100細胞以上あれば、主要なタンパク質を抽出できることが示された。LC-MSを用いて安定的なプロテオミクス解析を行う場合は、10,000細胞以上を必要とすることもわかった。実際に、大腸がん患者のFFPE組織を用いた場合は、少なくとも3 x 3 mm2 (約20,000細胞)必要であることが示唆された。しかしながら、がん幹細胞をこのオーダーで回収するのは、かなり困難であると考えられるため、さらなる最適化が必要であると考えられる。LC-MS解析の委託も踏まえて検討中である。これまでに、CD133陽性の大腸癌細胞株に特異的に発現している遺伝子またはタンパク質を同定することができているため、これら候補分子に絞った解析も視野に入れる必要性が考えられる。
3: やや遅れている
本申請は、プロテオミクス解析を利用して、がん幹細胞様細胞とその微小環境との関わりを明らかにし、その結果を元に固形がんにおける予後予測診断システムの構築を最終目的としている。本研究は、1. サンプルの前処理、2.解析手法の確立、3. 解析で得た候補分子の機能解析、4. がん幹細胞の単一細胞解析、5.微小環境のパターン解析、6. 新規予後診断システムの構築からなる。初年度では研究計画通りに、1及び2を遂行した。しかしながら、サンプル前処理に不十分な点もあり、改良の余地があった。このようなことから、予定していた研究の若干の遅延も認められる。そのため本研究は「やや遅れている(Slightly delayed)」と考えられる。
現段階において、研究はやや遅れている。遅れている部分は、手法の最適化と装置の高感度化であるため、その点を検討しながら並行して申請した研究計画に従い、研究を推進していく。平成26年度は、解析で得た候補分子の機能解析、がん幹細胞の単一細胞解析を行っていく。当施設内で次世代シーケンサの使用も可能になったため、計画書には書かれていないが、遺伝子の機能解析等で利用できると判断した場合は、利用していく。
次年度に購入予定の単一細胞分離システム(C1 System, Fluidigm)の価格改定に伴い、計上した予算での購入が困難になったため。この繰り越した予算を用いてC1 Systemの購入を予定している。
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