研究課題/領域番号 |
25710017
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研究種目 |
若手研究(A)
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
花田 耕介 九州工業大学, 若手研究者フロンティア研究アカデミー, 准教授 (50462718)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ゲノム関連解析 / シロイヌナズナ / 集団遺伝 / 二次代謝産物 |
研究概要 |
二次代謝産物が同種内の局所適応で必須であるならば、幅広い環境条件で生き残っているシロイヌナズナの生態株間では二次代謝産物の多様性があることが期待される。そこで、SNPで既に同定されている世界中の76ヵ所で自生しているシロイヌナズナの生態株に着目し、50種類の既知二次代謝産物と1000種類の未知の二次代謝産物の定量を行った。その結果、同種間でも生態株間で二次代謝産物のに多様性があることが明らかとした。その後、各二次代謝産物の多様性の原因となる遺伝子を同定するために、ゲノム関連解析を用いて各代謝産物の蓄積量に相関するSNPを同定した。しかし、相関するSNPの近辺には多数遺伝子が存在しており、各代謝産物の蓄積量に真に関係する遺伝子を同定することは困難であった。そこで、75個の生態株の全遺伝子の発現プロファイルをマイクロアレイによって同定し、各代謝産物の蓄積量と相関する遺伝子発現を示す遺伝子も同定した。次に、代謝産物の蓄積量に強い相関を示すSNPが近縁にあり、その遺伝子発現自身も代謝産物の蓄積量に強い相関を示す遺伝子群を各代謝産物の生合成に関係するものと定義した。しかし、各代謝産物の生合成に関連している遺伝子が、重複遺伝子である傾向は見られなかった。これは、二次代謝産物の多様性を生み出す主要因が、重複遺伝子であることを否定していた。一方で、想定外のことであったが、各代謝産物の生合性に関係する遺伝子の多くに、PolyAを持つ機能未知のnon-coding RNA(ncRNA)遺伝子が同定された。そこで、様々な代謝産物の生成に関わると考えられる13個の機能未知のncRNA遺伝子に焦点を絞り、Reference株であるCol-0において、それらの遺伝子の変異体(過剰発現体およびノックアウト体)が二次代謝産物を変動させているかを検討した。その結果、いくつかのncRNA遺伝子で、目的の二次代謝産物を変動させていることを明らかとしている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、ncRNA遺伝子、エピジェネティクス制御、生合成遺伝子発現の変化、二次代謝産物の生成という分子メカニズムの過程を明らかにすること目指している。現在までで、エピジェネティクス制御によって生合成遺伝子発現の変化することを強く示唆する結果を得ているため、おおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
ncRNA遺伝子発現が高い生態株と低い生態株で、バイサルファイトシークエンス方法によってメチル化状態を調べ、ncRNA遺伝子の発現の原因を推定する。ncRNA遺伝子の発現の原因となりえるDNA変異あるいはメチル化の変異を見出した際は、その変異を示すncRNA遺伝子領域をncRNA遺伝子発現が高い生態株と低い生態株間の掛け合わせで導入し、その変異を含んだ掛けあわせ体で期待通りの遺伝子発現を示すかを確認する。期待通りの発現を確認できたならば、遺伝子発現にトランスの影響はほとんどなく、同定された変異によって遺伝子発現が変動することを意味する。ncRNA遺伝子の過剰発現体とノックアウト体の変異体で遺伝子発現が反対になっている酵素遺伝子は、目的の代謝産物の生合成酵素である可能性が高い。そこで、その生合成酵素の候補遺伝子の変異体と野生株間で、目的の代謝産物に変動があるかを確認する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は、多数のエコタイプを生育しバイサルファイトシークエンスおよび二次代謝産物の定量を行った。これらには継続した技術員がいることによって飛躍的に研究が推進できる。そのため、継続的に技術員を雇用するために、次年度においても補助金を確保した。 26年度においても、継続的に技術員を雇用するために使用する予定でいる。
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