研究課題
若手研究(A)
細胞外cAMPの濃度を時間と空間で自在に変更できる微小流路をもちいて制御し、Ras結合ドメインに蛍光タンパクを結合したRBD-FPを粘菌に発現させ、Rasの一過的な活性化(膜局在)を測定した。その結果、細胞外cAMPの絶対濃度にたいして、Rasの活性化のピーク値が変化すること、またマイクロモル濃度領域では、適応後のRas活性が元のレベルにまで戻らず、細胞外cAMPの絶対濃度に依存する形で上昇することがわかった。この不完全な適応の度合いと細胞外cAMP との間の関係を解析したところ、シグモイド的な入出力関係を示し、かつEC50などの比較からは、cAMPレセプターのリン酸化が示す入出力関係に近い関係をもっていることが示された。絶対濃度がシグナル伝達経路でどのようにエンコードされているかを解析するため、MAPキナーゼERK2, Akt/PKBの活性を可視化測定するためのプローブを作成中である。また、複数のRasのシグナルを見分けるため、Raichu-Rasの改良版を作成し、その動作の検討を重ねている。また、Rasと下流のアクチン重合を同時測定するために、これまで利用してきたLimEΔコイルにかわり、酵母のアクチン結合部位由来のLifeActの導入をおこなった。ファロイジン染色などとの一致がよりすぐれていることが確認されたため、PHドメインやRBDとの蛍光タンパク融合型プローブとの同時発現する各種の安定発現株を作出した。解析手法においては、情報理論的な観点からの統計解析に詳しい専門家グループと定期的な議論を進め、現実的な手法の検討を重ねた。
3: やや遅れている
シグナル伝達系の一部の部分についての入出力関係の同定が進んでおり、計画した研究が遂行できている。入出力関係の同定には、幅広い対象の探索が必要であり、これについては新たなプローブ導入を試みているものの、時間を要する作業であることと、人的リソースの確保が年度の遅い段階までできなかった。そこで、解析手法に関する検討を前倒しして進め、また現在あるプローブでできる解析を優先しておこなった。
初年度に引き続き、各種可視化プローブの作成と細胞株の作出、入出力関係の解析を行う。昨年度は空間的な一様刺激に主に注目して解析を進めたが、これに加え、定常勾配化でのシグナル因子の空間分布と細胞膜上の各位置における、測定データをもとに、シグナル伝達系の情報の流れの解析を試みる。
蛍光プローブ開発の遂行がやや後半にずれこみ、この用途で必要となることが見込まれた測定装置の選定が年度内に間に合わなかったため。予定通りにタンパク質の測定装置、もしくは進捗状況に応じて測定解析のスループットを向上させるため、顕微鏡用の光学部品に充当する予定である。
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