研究課題/領域番号 |
25710022
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
澤井 哲 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (20500367)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | シグナル伝達 / 走化性 / 情報理論 / 細胞運動 |
研究実績の概要 |
バッファーとcAMP溶液を二股チャンネルからそれぞれ送液して層流を形成し、拡散によって2層流の境界にcAMP濃度勾配を作成させるための微小流路系の設計および作成をおこなった。これまでにY字型のジャンクションによる勾配形成に加え、天井が低くかつ流路幅の狭いチャンネルについて2層のPDMSをもちいたデザインについて、試行錯誤しながら条件検討をおこなった。これらのデバイス下において、濃度勾配が時間に定常状態を実現できる条件、さらに圧力制御装置とシリンジポンプからの流量を時間的に制御し、操作的に定義された濃度ゆらぎの摂動を加える方法を検討した。特に、秒スケールの変動の分解能と、2桁以上の濃度レンジの精度が実現を目指した。活性型Rasに選択的に結合するヒトのRaf-1タンパク質のRas結合ドメイン(RBD)に赤色蛍光タンパク質RFPを融合させたもの、ならびに、アクチン結合ペプチドにGFPを融合させたRFPRaf-1RBDの両方を共発現させた細胞を用い、膜付近における蛍光輝度値分布を計測した。同時に、青色蛍光分子をcAMP溶液と混合し、細胞外cAMP濃度の指標とした。これによって、活性型RasとF-actin、細胞外cAMPそれぞれの空間分布を3波長で経時的に測定するための条件出しをおこなった。また、Ras以外に、細胞内cAMPとアクチンの同時測定系についても、データ取得を進めた。さらに、細胞内の入力として、オプオジェネクティクスを用いてRasの活性型を調節する系の開発を進め、その条件出しを進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
シグナル伝達系の一部の部分についての入出力関係の同定が進んでおり、計画通りの研究が遂行できている。シリンジポンプによる送液において、不可避的に生じる速度ゆらぎによって勾配が時間にゆらぐ。このゆらぎと細胞の走化性応答との間の関係の測定を進めている。解析がやや予定より遅れているものの、濃度勾配を高い定量性で推定するには、光学系、流路系の双方において綿密な条件出しが必要であり、これについて技術的な知見を蓄積してきている。
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今後の研究の推進方策 |
初年度度は空間的な一様刺激の解析、次年度の定常勾配化でのシグナル因子の空間分布と細胞膜上の各位置における、測定解析に引き続き、第3年度は勾配の時間的にゆらぎと方向検出についての関係、ならびにオプトジェネティクスによる摂動について、詳細な解析をすすめる。勾配の検出限界についての予備的なデータもできてきており、この視点と情報のエンコーディングとの関係に注目し、研究を進める。バクテリアの走化性における関連研究にも注目し、定式化の参考とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
解析に用いるデータ取得の条件出しに時間がとられており、予定していた顕微鏡まわりの改変や細胞の改変の計画を次年度にまわしたため。
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次年度使用額の使用計画 |
シグナル伝達の上流と下流の可視化の組み合わせについて、探索空間をひろげて試行する。これにかかわる細胞培養、遺伝子改変、さらに光学系まわりの拡張を計画している。
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