研究課題
若手研究(A)
本研究では、姉妹染色分体間接着を担うコヒーシン複合体のダイナミクスを、一分子レベルで理解することを目的とする。コヒーシン複合体は細胞周期を通じてその局在やDNAに対する結合性を変化させ、姉妹染色分体間接着の必要な時に、必要な場所で、コヒーシン結合因子や修飾因子と協調しながら接着を達成している。しかしながら従来の細胞生物学的、生化学的解析では、コヒーシン複合体の挙動を分子集団として捉えることしかできず、コヒーシン分子が実際にどのようにDNA上で挙動し、接着に寄与しているのか、その詳細は明らかにできない。本研究ではDNA上のコヒーシンを一分子レベルで観察する系を確立し、その細胞周期に応じた挙動を明らかにするとともに、そのダイナミクスを制御するメカニズムを明らかにすることを目指す。平成25年度においては、コヒーシン一分子観察系の確立を目指した。まず、一分子観察に適した全反射顕微鏡システムをセットアップした。コヒーシン複合体は、ヒトコヒーシン複合体(Smc1/Smc3/Scc1/SA1からなるヘテロ四量体)を昆虫細胞へのバキュロウイルス感染系を用いて発現させ、FlagタグIPとHisタグ精製を組み合わせた2段階精製法により、stoichiometricな複合体を精製することに成功した。Scc1サブユニットのC末端にEGFPを付加することで、蛍光観察可能な複合体を得た。また、直鎖DNAは、アビジンコートしたカバーガラス上に、両端をビオチン化した直鎖DNAを貼り付けることで調製した。DNAを付加したカバーガラス上に、幅2mm、厚さ100umのflow cellを作製し、顕微鏡下で、直鎖DNAを様々な溶液と反応させることができる系を構築した。この系を用い、実際にコヒーシン複合体が直鎖DNA上に結合する様子が、バッファー中およびツメガエル卵抽出液中で観察できた。
2: おおむね順調に進展している
今年度の目標はコヒーシン一分子観察系の確立であったが、顕微鏡のセットアップ、観察に必要なflow cell chamberの作成、コヒーシン複合体の精製、アフリカツメガエル卵抽出液の調製など、系のセットアップに必要な材料は概ね揃い、当初の目標は達成できたと考える。
平成25年度、概ね系の確立は完了したので、今後はこの系を用い、コヒーシン複合体の一分子レベルでのダイナミクスの解析を行う予定である。また、細胞周期依存的なダイナミクス制御を明らかにするため、アフリカツメガエル卵抽出液を用いて、様々な細胞周期の時期を顕微鏡下で再現し、コヒーシン複合体のダイナミクスを観察する。
消耗品にかかると予想されていた経費が、節約等により減少したことと、定期的に消耗する顕微鏡用ダイオードレーザーの寿命が、予想よりも長くもったため、平成25年度に購入する必要がなくなったことによる。平成25年度予定していた顕微鏡用レーザーの交換が、平成26年度にずれ込むことが予想されるため、それらの交換に使用予定である。それ以外は消耗品等で使用予定である。
すべて 2013 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 2件) 備考 (2件)
Proc Natl Acad Sci U S A.
巻: 110 ページ: 13404-13409
10.1073/pnas.1305020110
Nature
巻: 501 ページ: 564-568
10.1038/nature12471
http://www.bio.nagoya-u.ac.jp/~nishiyama/Nishiyamalab-home.html
http://www.bio.nagoya-u.ac.jp/laboratory/cb_ttp.html