研究実績の概要 |
選択的オートファジーでは、レセプタータンパク質が分解標的を認識し、Atg11というアダプタータンパク質を介してオートファゴソーム形成装置を標的上にリクルートする。出芽酵母には、液胞酵素会合体、ミトコンドリア、ペルオキシソームを標的とする選択的オートファジー経路があり、それぞれ、Atg19/Atg34, Atg32, Atg36がレセプターとして機能する。本研究では、タンパク質キナーゼHrr25が、Atg19, Atg34, Atg36をリン酸化し、これらとAtg11との結合を強化することで、それぞれが誘導する選択的オートファジー経路を正に制御することを明らかにしてきた。当該年度は引き続き、Hrr25によるレセプターのリン酸化の制御機構を明らかにすべく解析を進めた。昨年度までに、Atg36がペルオキシソームへ局在する際の足場となるPex3の欠損細胞ではHrr25によるAtg36のリン酸化がほとんど起こらなくなることを見いだした。今年度は、これに加え、他のPexタンパク質の欠損株ではAtg36のリン酸化はほぼ正常に起こることを示し、ペルオキソームの生合成はAtg36のリン酸化には重要でないことを明らかにした。さらに、Hrr25によるAtg36の試験管内リン酸化反応系に精製Pex3を加えると、Atg36のリン酸化が促進されることがわかった。Pex3にはAtg36と相互作用することにより直接Hrr25によるAtg36のリン酸化を促進する作用があることが示唆された。一方で、Atg36がペキソファジー誘導条件においてプロテアソームにより分解されていることを見いだした。すなわち、ユビキチン-プロテアソーム系がペキソファジーの制御に関与している可能性が示唆された。また、核および小胞体の選択的オートファジーを駆動する新規レセプターAtg39, Atg40の発現調節機構に関する解析を進め、それぞれの遺伝子のプロモーター近傍に、富栄養条件でこれら遺伝子の転写を抑制する配列が存在することを突き止めた。
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