研究課題
1. 大腸菌における分裂間隔時間の平均と分散の線型関係前年度までの実験で確認されていた、大腸菌の平均と分散の線型関係について、実験条件を追加し、W3110株について9環境条件、B/r株について2環境条件下での結果を調べ、少なくともW3110株については線型関係が成立することを確認した。B/r株については、W3110株に比べ、同じ平均で比較すると分散が小さくなっていることから、W3110株とは異なるトレンドにしたがうことが予想された。これは、細胞株よって内因的な分裂間隔時間のゆらぎの大きさが異なり、環境に依存しない内因的な細胞の安定性を、線型関係の傾きから評価できる可能性を示唆した。これらの一連の結果は、論文として発表した(Hashimoto, M., et al., PNAS, 2016)。2. 分裂酵母における分裂率と死亡率の線型関係前年度までに構築していた1細胞計測デバイスを利用し、分裂酵母Schizosaccharomyces pombeの成長動態を7つの定常環境下で定量計測した。この観察を通じて、S. pombeでは、好環境条件下であっても比較的高いレベル(1-2%)で、細胞が突然死を起こすことを明らかにした。当初、この好環境条件下での死亡率の高さは予想していなかったため、分裂率と死亡率の関係を明らかにする解析をおこなう必要が生じた。その結果、分裂率と死亡率のあいだには、線型関係が成り立ち、分裂率が大きくなるほどそれ以上に死亡率が大きくなり、いわゆる細胞の寿命が短くなることを明らかにした。またこの線型関係から、定常的に成長できる最も低い分裂率を予想できる可能性が示された。
2: おおむね順調に進展している
基本的には、当初の予定通り、大腸菌や分裂酵母を用いて、世代時間の平均と分散の線型関係などの検証が進んでいる。一方、分裂酵母の計測では、当初予想していなかった好環境条件下での死亡率の高さなどが判明し、その検証という新しい研究項目が必要となるなど、計画の変更もあった。
分裂酵母の実験結果を論文として報告するとともに、その他の細胞種の世代時間や死亡率の計測を進める。具体的には、動物細胞を対象として、マウス白血球系がん細胞(L1210)の1細胞計測系を確立させることを目指す。またL1210における世代時間のゆらぎの特性を明らかにすることを目指す。
分裂酵母の実験が後ろにずれたため、当初予定していた、L1210細胞の解析が遅れ、それに必要となる培地や血清などの試薬の経費を後年度にまわす必要が生じたため。
主にL1210細胞の解析に必要となる培地や血清、および微細加工に必要となる消耗品費に利用する。
すべて 2016 2015 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件、 招待講演 4件) 備考 (1件)
Proc Natl Acad Sci USA
巻: 113 ページ: 3251-3256
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