研究課題/領域番号 |
25711015
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
齋藤 大介 東北大学, 学際科学フロンティア研究所, 助教 (90403360)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 交感神経 / 副腎 / 生殖腺 / 恒常性維持機構 / 神経堤細胞 / 細胞移動 |
研究実績の概要 |
交感神経系(交感神経と副腎)およびそれによって機能調節される血管系は恒常性維持の中心を担うユニットである。本研究では個体発生における交感神経系の成り立ちと、交感神経-血管の間にはたらく相互作用の確立機構を理解することを目的としている。具体的には、①共通前駆細胞(Neural crest細胞:以下、NC細胞)から生じる交換神経と副腎髄質の分岐および形成機構、②副腎が作られる際の皮質-髄質の合体と両者にはたらく相互作用の実体、③交感神経-血管インターフェースの成立機構の解明を目指してきた。 NC細胞から交感神経と副腎髄質を分岐させるきっかけがBMPシグナルの活性化度合いの差(交換神経ではBMPシグナルが負に、副腎ではBMPシグナルが正に制御される)、BMPスイッチと名付けた機構によって制御されていることがこれまでに分かっていた(①に関連する研究)。当該年度はこのBMPシグナルの上流に、Crossveinless-2(Cv-2)がはたらくことを見出した。その詳細は、Cv-2が交感神経-髄質系のNC細胞においては負のBMPシグナル制御因子としてはたらき、交感神経で特異的に発現することでBMPシグナル活性化の差を生み出すことがわかった。 また、②の解析として、副腎皮質の由来を解析した。副腎皮質は、同様にステロイドホルモンを合成分泌する器官である生殖腺と共通の細胞から生み出されると考えられてきた。しかしながら私の細胞系譜解析の結果、副腎皮質と生殖腺の由来は異なることがわかってきた。これにより、より正確に副腎皮質への遺伝子導入が可能となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
①と②の研究は順調に推移しているものの、③の研究は当該年度の後半からスタートする予定であったが、H26年度初頭からのスタートになる。その理由は複合的であり、一つは研究機関を異動したことによる研究時間の短縮、およびCv-2機能解析に時間を要したことに起因する。
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今後の研究の推進方策 |
①の解明に向けて、NC細胞から交感神経と副腎髄質の分岐に関わるであろうさらに上流の因子を特定するために、Cv-2のエンハンサー解析を行い、交感神経特異的な遺伝子発現を可能とするシス領域の特定と、そのトランス因子の同定を行う。②に関連した研究であるが、副腎皮質と生殖腺領域が別々のコンパートメントとして形成される機構を解析するとともに、副腎皮質特異的な遺伝子操作が可能となったことから、副腎皮質が副腎形成にどのように寄与するかについて解析する。③については交感神経の投射を阻害した際の血管形成への影響をトランスジェニックウズラを用いたイメージングなどで解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は2つある。研究代表者が異なる所属機関に異動したことにより、研究計画に遅れが生じたことがひとつ。当該年度の研究、Crossveinless-2の機能解析に時間を要し、③の研究である交感神経と血管インターフェース確立機構の研究に取り掛かる時期が遅れたことがもうひとつの理由である。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度における交感神経と血管インターフェース確立機構研究の推進には、遺伝子導入とトランスジェニックウズラ作成が必要であり、ライフテクノロジーズ社の遺伝子導入装置Neon一式およびその消耗品と、ウズラ飼育用の機材一式に使用する。さらに遺伝子発現解析および機能解析用の試薬類に使用する。
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