研究課題/領域番号 |
25711017
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
桧垣 匠 東京大学, 新領域創成科学研究科, 准教授 (90578486)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 気孔 / 二酸化炭素 / 葉表皮細胞 / バイオイメージング / シロイヌナズナ / 形態計測 / 画像クラスタリング / 数理モデル |
研究実績の概要 |
本研究はシロイヌナズナ子葉をモデル材料に高CO2条件における葉表皮組織の気孔分化および表皮細胞形態形成を定量的かつ統計的に検討することを目指すものである. まず,共焦点顕微鏡画像処理に基づいて,子葉における気孔の位置や数を高精度かつ高速に定量評価する解析手法を確立した.本手法を用いて,380 ppmおよび1000 ppm CO2条件においておよそ7日間栽培したシロイヌナズナ子葉を発生段階を追って細胞形状と気孔分化を子葉全域で比較検討した.その結果,1000 ppm CO2条件下でサテライトメリステモイドおよびサテライト気孔が高頻度に生じることを見出した.また,サテライトメリステモイドの発生が亢進することが報告されているDNA複製ライセンシング因子CDC6過剰発現体では,高CO2条件におけるサテライトメリステモイド形成が野生株と比較して過剰に促進することを新たに見出した.以上の結果から,CDC6依存的なDNA複製の亢進が高CO2条件下におけるサテライトメリステモイド形成の主たる要因である可能性が示唆された. さらに,数理モデルの専門家との共同研究により葉表皮細胞の湾曲を説明する数理モデルを確立した.この数理モデルによって,私たちが実験的に明らかにしたkor1変異体あるいはセルラーゼ処理における細胞壁の肥厚と湾曲の低減を理論的に説明することができた.現在,別の細胞壁関連変異体の表現型解析を行っており,それらの研究成果と併せて原著論文を纏めて報告する予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は順調に進展しており,予想外の研究進捗のために新たな変異体を入手して解析する必要が生じた.当初予定していた計画内容よりも多くの作業量を必要するため,今年度末に予定していた生化学実験を来年度に延期し,経費繰越も行った. 数理モデル解析においては当初の計画以上の進展が認められ,研究成果の一部を3報の投稿論文として纏めている.以上の状況を踏まえて,本申請研究はおおむね順調に進展していると判断される.
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今後の研究の推進方策 |
葉表皮細胞の細胞壁湾曲に関する数理モデル解析の結果を受けて,細胞壁関連変異体の表現型を定量的に評価する.必要に応じて,実際の細胞実験で得られた知見を数理モデルに基づいたシミュレーション解析にフィードバックする. また,播種後21日目の子葉における高CO2応答性を定量的に検討する.特に,380 ppmおよび1000 ppm CO2処理が子葉面積・気孔数・気孔密度・表皮細胞数・気孔インデックスなどの指標に及ぼす影響を統計的に評価する. 来年度は最終年度であるため,これまでの研究成果を纏めて学会発表および投稿論文として積極的に発表する.
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次年度使用額が生じた理由 |
研究進捗の結果,当初の予想に反して,新たな変異体の表現型解析を実施する必要が生じた.そのため,今年度末に予定していた生化学実験を来年度に延期し,今年度は表現型解析に注力することにした.その結果,生化学実験に係る費用が次年度使用額として生じた.
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額はタンパク質相互作用を確認するための生化学実験の物品費として使用する予定である.
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