研究課題
ハマウツボ科根寄生植物であるストライガやオロバンキは主要な穀物や野菜に寄生し、アフリカ地域を中心に甚大な農業被害をもたらしている。しかし、植物寄生のメカニズムはまだほとんど解明されておらず、その根本的な防除法は確立していない。本研究は、遺伝学的アプローチを用いて寄生植物の寄生の分子メカニズムの包括的理解を目指す。特に、ハマウツボ科条件的寄生植物コシオガマの変異体を用いた寄生成立に必要な遺伝子の機能解析と原因遺伝子同定を目的とする。植物寄生の分子機構を解明することは、植物間相互作用の新たな機構を明らかにするだけでなく、将来的には新しい病害寄生雑草の防除法の開発につながると考えている。EMS処理をしたコシオガマ約2000の M1ライン種子を、吸器誘導物質であるDMBQを含む培地上に播種し、スクリーニングをおこなった。変異体候補M2植物体は、土に移植することにより次世代種子を得て、2次スクリーニングをおこなった。2次スクリーニングでは、DMBQ培地における表現型を確認するとともに、リゾトロン法を用いて宿主に感染させ、寄生形質に異常が見られる変異体を単離した。さらに、これらの変異体の表現型の詳細解析をおこなった。表現型が最も明確に確認できる変異体を用いて、原因遺伝子の同定をおこなった。得られた変異体を野生型親株にかけ合わせ、表現型のあるF2世代植物DNAのプールをシーケンスするMutMap法を用いることで、変異原因遺伝子を同定した。変異体同定を成功させるために、レファレンスゲノムの整備と最適なF2個体の数やカバレージなどを検討した。
2: おおむね順調に進展している
変異体の単離及び解析をおこない、ゲノムリシーケンシングによって遺伝子の同定をおこなった。表現系に曖昧さの残る変異体については、遺伝子同定には至らず、後代での解析が必要であった。産休による研究中断があったため、次年度までの研究期間延長を申請した。
遺伝子同定に至らなかった変異体について、後代での表現型、分離比を確認して遺伝子解析を行なう。相補試験による遺伝子同定を進める。
研究は順当に進んでいたが、研究代表者が子を出産したため、産前産後休暇を取る必要が生じ、その分遅れが生じた。そこで、28年度に計画していた研究計画を29年度に実施することとなり、次年度使用額が生じた。
変異体の表現型解析を進め、また原因遺伝子が特定できなかったものについて再度リシーケンシングをして遺伝子特定を行う。変異体の掛け合わせを行い遺伝的純度を高める。
すべて 2017 2016 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件)
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