研究課題
若手研究(A)
遺伝情報の継承と維持には、染色体の正確な複製、分配、損傷修復が必須である。コヒーシンは複製された姉妹染色分体を接着し、正確な染色体分配を保証する。さらにコヒーシンは二重鎖切断損傷の修復に必要である。しかしコヒーシンが染色体を接着する機構はまだよく分かっておらず、特にその成立過程は大部分が未解明である。加えてコヒーシンが二重鎖切断損傷の修復に機能する機構はほとんどわかっていない。そこで本研究では、ツメガエル卵を用いた試験管内再構成系を主たる実験系に用い、コヒーシンが染色体を接着する機構、および 二重鎖切断修復を促進する機構を解析した。コヒーシンのDNA結合はScc2-Scc4コヒーシンローダータンパク質を必要とする。ツメガエルScc2-Scc4はDNA複製開始のキナーゼであるDDKと相互作用し、DDKに依存して染色体に呼び込まれる。本年度はDDKの機能領域の解析を行い、DDK自身のクロマチン結合モチーフの同定と、それを含む多数の欠失変異体の作成を進めた。次年度以降、これらを用いてDDKとScc2-Scc4の相互作用領域の同定、および相互作用の制御機構を解析する。本年度はこれに加え、コヒーシンをアセチル化して接着成立を促進する酵素であるXEco2の一次構造解析を進め、XEco2が染色体接着を促進するのに必要な新規モチーフを同定した。さらにXEco2がDNA複製の前と後の二点で機能することを見いだした。特にDNA複製開始後の機能については、既知基質のアセチル化は既に完了しているタイミングであり、未知の基質をアセチル化する可能性が推測される。次年度以降、これらの基礎的解析を土台に、試験管内再構成系の確立や、個々の因子のさらなる機能解析を進める。
2: おおむね順調に進展している
本年度計画したコヒーシンローダー複合体Scc2-Scc4とDDKの相互作用解析については変異体の作成を中心に基礎的な解析が進展した。さらに、次年度以降の計画を前倒しする形で、コヒーシンアセチル化酵素であるXEco2の作用タイミング、基質の解析を進めた。加えて本年度は次年度以降に向けて組み換えコヒーシンの作成を進めた。総合的にみて、概ね順調な進展と考える。
次年度はScc2-Scc4、DDK、XEco2など鍵となる因子の機能解析を更に進める。加えてコヒーシンなど、現在組み換えタンパク質を所有していない因子の発現系を構築し、試験管内再構成に向けて準備を進める。
本年度は既に研究試料のある程度揃っている因子についての解析を主に進めたため消耗品の使用額が比較的少なかった。また研究補助員の選定が遅れたため、人件費の支出がなかった。次年度には比較的コストの掛かるタンパク質発現、精製実験を予定している。また研究補助員の選任が完了したため、人件費の支出が予定されている。このため、次年度には当初計画に準じた研究費の使用を計画している。
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FEBS Journal
巻: 280(14) ページ: 3467-3479
10.1111/febs.12344