H29年度はH27年度に作成した遺伝子量補償複合体の抗体2つ(ポリクローナル抗体)に関して、ウェスタンブロッティングなどにより抗体の質を確認した。その結果、どちらの抗体も特異性という点において不十分な点があり、ChIP-seqに使用するのは難しいと判断した。 そこで、ショウジョウバエの免疫沈降(ChIP)用抗体として市販されている3つのクロマチン修飾抗体(転写活性化領域のクロマチン修飾マーカーであるH3K4me3、転写不活性化領域のクロマチン修飾マーカーであるH3K27me3、遺伝子量補償領域のクロマチン修飾マーカーであるH4K16Ac)を購入した。Neo性染色体を持つDrosophila mirandaの3齢幼虫のオスをサンプルとし、これらの抗体を用いてChIPを行い、ChIP-PCRにより濃縮率を計算した。その結果、H3K4me4抗体に関しては200倍程度の濃縮率となり、良好な結果であったものの、残り2つの抗体には濃縮率が5倍程度であり、ChIPがうまくいっているか判定できなかった。しかし、本年度が最終年度であったため、これらのChIPサンプルとコントロールサンプルを用いてライブラリ作成を行いイルミナHiSeqを用いてシーケンスした。しかし、やはりChIPサンプルが良好でなかったためかレプリケート間でのばらつきが大きく、あまり有用な情報は得られなかった。 本研究課題5年間の結果をまとめ、Neo-Y染色体の退化とNeo-X染色体に生じる遺伝子量補償に関する論文をまとめ、現在投稿中である。
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