性染色体が一対の常染色体から進化すると、通常Y染色体は組換えの機会を失い退化する。この潜在的不利を補うため、多くの生物はオスのX染色体上の遺伝子の発現量が上昇してY染色体遺伝子の退化による発現量の減少を補っている(遺伝子量補償)。しかし、遺伝子量補償がどのような分子進化過程を経て発達するのかは不明であった。 本研究では、約100万年前に新たに性染色体を獲得したミランダショウジョウバエとその近縁種のゲノム・トランスクリプトームを比較解析することで、この謎に迫った。その結果、性染色体になるとY染色体だけでなくX染色体も退化しうること、遺伝子量補償は個々の遺伝子にも作用することが明らかになった。
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