研究課題/領域番号 |
25711024
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研究種目 |
若手研究(A)
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
菊池 真司 千葉大学, 園芸学研究科, 助教 (80457168)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 種分化 / 染色体 / トレニア / 比較ゲノム解析 / 異数性 |
研究概要 |
染色体数が1対異なるトレニア・フルニエリ(2n=2x=18)とトレニア・バイロニー(2n=2x=16)のF1雑種(2n=17)の減数分裂を観察すると8対の二価染色体と1本の一価染色体が出現する。2種のゲノム構成を比較するために、本年度はバイロニーのゲノミックDNAからシークエンス・ライブラリを作製し、~64bpのショートリード長で約2.3GbpのバイロニーゲノムDNA配列(ゲノムサイズの約13.5倍)を決定した。これをフルニエリのレファレンス配列にソフトウェアbowtieでマッピングしたところ、約30%の723,365,184bpがフルニエリのゲノムDNA配列にマップされた。さらにマッピングの結果から、反復配列を除くと、2種の間で連続した10kb以上の長さで配列が異なる領域は存在しないことが分かった。これは共通のDNA配列のなかで染色体の構造変異が起こり、それが2種の染色体数の違いに起因したことを示唆している。現在、F2個体のショットガンシークエンスからフルニエリのScaffold配列を連鎖群に大別すること、フルニエリから作製したfosmidクローンを用いてフルニエリとバイロニーでFISH解析を進めており、最終的に2種を比較したシンテニーマップを作製することで、それらの2種の間で存在する染色体の構造変異を明らかにすることを目指している。一方、フルニエリ染色体添加バイロニー系統の育成ではBC1F1各個体の染色体構成を種特異的動原体反復配列をプローブとしたFISH解析で明らかにした。これら個体は全て1本以上のフルニエリ染色体を持っていたので、バイロニーとの戻し交雑後、胚救助を経てBC2F1を育成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画において、1) バイロニーゲノムDNA配列の決定と、フルニエリゲノム配列へのマッピング、2) 染色体添加系統育成において胚救助を含むBC2F1の育成、3) トレニア属の系統分類、を本年度の研究到達点に定めた。そのうち、バイロニーゲノムDNA配列の決定とレファレンス配列へのマッピングを完了し、その結果から2種の染色体数の差異は染色体の構造変異にあるという新たな仮説を得た。この結果を受けて構造変異領域の特定に向けた実験を開始している。また、順化中であるがBC2F1が数個体得られており、さらに大量に交配を進めているところである。系統分類ではITS配列によるトレニア属5種6系統の系統樹を作製し、作製済みのrbcLによる系統関係とほぼ同一の結果が得られた。以上のように、当初の研究計画に沿って研究が順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの系統解析からx=8のバイロニーはx=9の染色体を持つグループから派生したことが示唆されていた。本研究では特定の1対の染色体の消失が2種の染色体数の変異に起因したという仮説の検証を研究目的としていたが、比較ゲノム解析の結果は2種の間で大規模な染色体領域の欠失が存在しないことを示している。今後は、この比較ゲノム解析の結果を検証するため、フルニエリのゲノム配列を連鎖群に大別し、fosmid-FISHを組み合わせながらフルニエリーとバイロニーのシンテニーマップを完成させ、染色体が異なる2種のゲノム構成の違いを明らかにする。さらに、減数分裂の染色体対合において多価染色体が形成されない要因を明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額が生じた理由は、主にグロースチャンバーと位相差顕微鏡の研究備品の購入が完了していないため。研究室の実験スペースの制限や節電、研究の進展状況を考慮して、次年度以降に購入するよう助成金使用計画を変更した。 申請書にあるフリーザー(-30℃)と位相差顕微鏡の購入に当該助成金の使用を計画している。
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