研究課題
本研究は、イネ種子を構成する胚と胚乳において、それぞれのサイズを規定する胚周辺胚乳領域の構築過程を3つのphase(確立、維持、領域規定)にわけ、胚―胚乳サイズに重要な鍵因子であるREDUCED EMBRYO(RE)、GIANT EMBRYO(GE)、GOLIATH(GO)遺伝子の機能解析や新奇因子の同定を通じて、それぞれの分子発生学的基盤を明らかにすることを目的とする。また、本年度は胚周辺胚乳領域の各phaseにおける形態学的観察を綿密に行い、野生型における胚周辺胚乳領域の発生ならびに解析手法(具体的には固定方法、染色手法や異なる顕微鏡を用いた観察など)について基盤的な知見を得た。これらの成果は、今後の変異体の解析や着目すべき形質評価についての根本となる重要な成果である。確立phaseに関与することが予想しているembryoless1(eml1)の原因遺伝子の同定に成功し、その相補性試験まで終了した。EML1遺伝子はこれまでに報告されていない新奇転写因子をコードしており、この変異体は最も顕著な胚小化を引き起こすことからこの遺伝子産物が胚サイズを制御する上で重要な調節因子となっている可能性が見いだされた。維持、領域規定phaseに着目した解析では、その他の新奇変異体の同定のための材料作りや各二重変異体の作成、RE1ならびにRE2遺伝子の誘導系の確立、GE基質同定のために行うメタボローム解析のための形質転換体の作成などを行った。各材料は平成26年度から具体的な解析へと順次進めていく予定である。
2: おおむね順調に進展している
いくつかの実験において予期していなかった事態が発生した。具体的には、re3、re4変異体の原因遺伝子単離を行う実験において当初インド稲との交配集団を用いた解析を進行させていたが、候補領域だと推定していたゲノム領域は原因遺伝子の存在とは無関係であることがわかった。また、RE1、RE2遺伝子の誘導系構築を目的とした実験では、形質転換植物体の子房を用いた誘導系の確立は誘導試薬の子房組織への浸透度などの問題により困難であることがわかった。これらの実験に関しては別のストラテージに変更して解析を進めており、研究全般としては概ね順調に進行していると考えている。
大半の実験計画において当初の計画通りに研究を進めていく。また、昨年度後半より実験計画の一部について変更を行った。具体的にはRE1、RE2のdirect targetの探索では、植物体を用いた誘導系の確立を目指したが、出穂した開花前の穂にDEXを霧状散布を行う、あるいは穂を切断し、DEX溶液中で培養し、茎からDEXを導入する方法を試みたがうまく誘導することはできなかった。そのため、平成26年度ではRE1、RE2を誘導するプロモーターを変更し、植物体ではなくカルス状組織での誘導系の確立を試みる予定である。また、re3、re4変異体の原因遺伝子の同定と機能解析についてはインド稲との交配集団を用いた原因遺伝子の同定が困難であったため、昨年度後半に異なる日本稲栽培種との交配を行い、マッピング集団の作成を完了させた。平成26年度はこのマッピング集団を用いてマッピングを行っていく予定である。
平成25年度に予定していた実験のいくつかにおいて予期していなかったことが起こり、一部計画の見直しを行った。そのため、予定していた実験のために必要だと考えていた物品の購入や技術補佐員の雇用などを見送ったため。次年度使用額については、今年度計画を変更した実験の進行状況を踏まえつつ、適切に使用していく予定である。
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