我々はこれまでに土壌細菌Bacillus cereusとその近縁種が胞子形成時にケイ酸を取り込み、生体内で重合反応を起こしてシリカを形成・蓄積する事を発見した。シリカが蓄積される胞子殻は多数のタンパク質で構成されることから、シリカの蓄積(ケイ酸の重合によるシリカ形成)にはタンパク質が関与していると考えられた。 前年度までの研究においてシリカ形成・蓄積メカニズムの解析を行い、胞子殻タンパク質のひとつであるCotB1をコードする遺伝子を破壊するとシリカ蓄積量が顕著に低下することを明らかにした。このことからCotB1がシリカ形成に関与していることが強く示唆された。しかし、別の可能性として、胞子殻タンパク質であるCotB1の遺伝子を破壊したことで、胞子殻が正しく形成されなくなり、そのことがシリカ蓄積量の低下につながっていることも考えられた。 そこで、本年度はcotB1遺伝子破壊株の胞子切片の電子顕微鏡観察を行い、本遺伝子破壊株においても野生株と同様に胞子殻が形成されていることを明らかにした。また、cotB1遺伝子の発現解析を行ったところ、その発現時期はケイ酸取り込みのタイミングとよく一致した。さらに、発現したCotB1タンパク質の局在を確認したところ、アミノ配列から予想されたとおり、シリカが蓄積される胞子殻への局在が認められた。これらの結果から、CotB1がシリカ形成に関与していることが強く支持された。
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