研究課題/領域番号 |
25712010
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
丹羽 隆介 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (60507945)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 遺伝学 / 昆虫 / 生理学 / 発生・分化 / コレステロール / グルタチオンS-転移酵素 |
研究実績の概要 |
本研究は、コレステロール動態の調節に関わる新規タンパク質Noppera-bo(以下、Nobo)の機能の解明を目指している。研究実施内容として、Nobo組替えタンパク質を用いた生化学的解析、nobo機能低下個体の機能解析と基質探索、そしてメタボローム解析を用いたアプローチの3つの計画を立てた。このうち、Nobo組替えタンパク質を用いたアプローチについては、Noboの酵素活性を簡便に追尾する試験管内反応系の確立に成功し、Noboの活性を変化させる因子の1つがステロイド類であることを見出した。すなわち、Noboの酵素活性は、ステロイドホルモン生合成器官内に存在するステロイド類そのもので変化を受ける可能性を見出すことができた。ショウジョウバエnobo機能低下個体を用いたアプローチにおいては、nobo個体の表現型解析とコレステロール動態調節に関する細部にわたるデータを整備し、原著論文の公表を実現させた。一方、ショウジョウバエnobo機能欠損個体において、昨年度までに見出した基質候補分子のグルタチオン化状態の検討を行ったが、明瞭な結論を得るに至ることはできなかった。最後に、メタボローム解析については、昨年度の段階で解析に要する一定量異常のキイロショウジョウバエの組織の収集が困難であることを認識した。このことから、より大型昆虫での解析が妥当であると判断し、カイコガのnobo遺伝子のノックアウト個体を作出し、本年度はその表現型解析に努めた。カイコガのnobo遺伝子の変異体は幼虫期致死であること、その致死性がエクジステロイド生合成の低下によるものであること、そして変異個体の前胸腺ではステロールの顕著な蓄積が認められることを明らかにした。本年度中に記載論文の投稿を済ませた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ショウジョウバエnoboの機能を記載した論文が受理されたこと、およびカイコガnobo変異体の表現型を記載した論文を投稿中であることは、成果公表の点で良い進捗状況である。一方で、Noboの基質分子の機能解析については当初の予測よりも時間がかかっており、やや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの2年間で着実に実験データは蓄積してきていることから、基本的には現在までに培ってきた方向性を継続していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
基質候補分子をコードする遺伝子の機能解析にかかる経費、および突然変異株を用いた生化学的解析にかかる経費が、実験試料の調製がまだ途上である実験区も多いため、経費が抑えられた。
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次年度使用額の使用計画 |
H27年度においては、解析に必要な実験試料の調製を鋭意すすめると共に、キイロショウジョウバエおよびカイコガのnobo変異個体の生化学的解析も継続することから、繰り越された研究費は必要経費として充てる計画である。
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