研究課題/領域番号 |
25712020
|
研究種目 |
若手研究(A)
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
横田 慎吾 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (30600374)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | セルロースナノファイバー / ネマチックオーダーセルロース / 表面化学改質 / ナノ構造 |
研究概要 |
自然界でみられるような三次元構造形成プロセスでは、特定のナノ/マイクロパターンを有する足場表面とその上に階層的に堆積するナノサイズのビルディングブロックとの間にはたらく界面相互作用が重要となる。本研究は、ユニークな構造化特性を示すセルロースナノ物質に着目し、その表面自由エネルギーを有機化学的アプローチによって変化させ、新たな三次元構造材料の構築を目指すものである。本年度は、①セルロースナノファイバーならびに②セルロース配向膜(ネマチックオーダーセルロース(NOC))について、精密な化学改質プロセスの確立を目指した。 ①セルロースナノファイバー:水中カウンターコリジョン法によって得られた微結晶セルロース由来のセルロースナノファイバーについて、酢酸エステル化を施した。赤外分光法、X線光電子分光法により表面置換度を見積もったところ、その値は、添加する無水酢酸の量によって異なり、一定の添加量以下の条件においては、元の結晶化度、ナノ繊維形態を保ったままで表面が酢化された。またこの表面酢化ナノファイバーは、出発ナノファイバーより水への分散性が向上した。さらに乾燥後においても水や極性有機溶媒への分散性を示した。 ②NOC:原子移動ラジカル重合(ATRP)開始基のNOC表面への導入密度を制御すべく、表面改質条件を精査した。その結果、固定化する開始剤の仕込み量の増加に伴って表面置換度は増加したが、置換度およそ1.2で極大値をとり、高密度に開始基を導入することが可能であった。その後、NOC表面からのATRPによるメタクリル酸メチルの重合を行ったところ、分子量分布の狭いポリマー鎖による表面修飾がなされた。得られた表面改質NOCは、表面の一軸配向を保っており、新たなテンプレート機能の発現が期待された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
セルロースナノファイバーの表面化学改質において、平成25年度は、詳細な酢化反応条件の検討と評価プロセスの確立を達成した。導入するアルキル側鎖の長さの影響については、次年度以降の検討課題となった。NOCの改質に関しては、表面に導入するポリマー鎖の密度と長さを制御することに成功した。
|
今後の研究の推進方策 |
セルロースナノファイバーについて:平成25年度は、水中カウンターコリジョン法によって得られる木材由来のナノファイバーの表面酢酸エステル化について詳細に検討し、反応条件および評価手法を精査した。今後は、結晶構造やナノ形態の異なるセルロースナノファイバーについての精密な表面化学改質を行う。まず、酢化反応速度について詳細な検討を行い、出発ナノファイバーの表面状態との相関性を明らかにする。さらには、長さの異なるアルキル側鎖を導入し、その構造化特性を評価する。溶媒分散性を検討した後に、水分散系における液晶やゲル形成能について検討する。非水分散系においては、水/空気あるいは非水系溶剤界面での二次元構造形成について検討する。 ネマチックオーダーセルロース(NOC)について: NOC表面に一軸配向したセルロース分子鎖の水酸基を介した表面開始原子移動ラジカル重合法に成功した。今後は、疎水性グラフト鎖の長さと密度を変えることによって表面自由エネルギーの制御を試みる。得られた基材表面の性質の評価方法としては、酢酸菌(Gluconacetobacter xylinus)を用いた独自のシステムを用いる。酢酸菌より産生されるセルロースナノファイバーと基材表面との相互作用に起因する菌の走行挙動を観察する。汎用性の高い表面化学改質手法の利点を活かして、官能基の影響についても検討する。
|