研究実績の概要 |
ドジョウA, B系統とカラドジョウを用いて人工交配し、様々なゲノム構成の二倍体、三倍体を誘起し、それらの配偶子形成と生殖腺を組織学的に調査した。同質二倍体では雌雄ともに発達した生殖腺を有したが、異質二倍体では雄ではごく少量の精子を産生するものの、精巣では減数分裂過程で停止した精母細胞が多数観察され、雌では僅かに発達中の卵母細胞は観察されるが、第一減数分裂前期で停止している状態で存在することが明らかとなった。同質三倍体は雌雄ともに妊性は認められないが、異質三倍体の雄では減数分裂が完了することなく、第一精母細胞で停止していた。一方、雌では発達した卵母細胞が比較的多く観察された。以上のことは生殖腺発達や配偶子形成においてゲノム構成が大きく影響することを示唆する。更に、同様のゲノム構成であっても雌雄で異なる妊性を示唆したことより、配偶子形成は生殖腺の性に依存することが示された。 両性生殖二倍体個体とクローン由来三倍体の卵巣の発達段階を組織学的に調査した結果、クローン由来三倍体の卵原細胞の核面積では二倍性と三倍性を示す2つのモードが観察された。すなわち、クローン由来三倍体におけるゲノム削減は減数分裂前に生じることが示唆された。 ドジョウA系統、B系統、クローン系統の卵巣・精巣を対象に次世代シークエンサーを用いたトランスクリプトーム解析では、各系統と全系統を統合した卵巣と精巣でのESTデータベースを構築した。それらの配列をレファレンス配列として発現量解析を行ったところ、クローン系統に特異的に発現変動を示すコンティグが得られた。それらの多くは、クローン系統で特異的に発現量が増えていた。これらについて、BLAST解析の後、ジーンオントロジー解析を行った結果、細胞分裂装置や細胞周期、染色体等に関連する複数の遺伝子を同定するに至った。
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