平成25年度に約8700人にも及ぶ日本全国の消費者を対象に実施したアンケート調査を基に、福島第一原子力発電所事故後の風評被害の実態について分析した。アンケートで聞いた福島第一原発近辺で生産された青果物(キュウリ、リンゴ)、生シイタケ、畜産物(牛肉、豚肉、鶏卵)、水産物(マグロ、ワカメ)の9品目の農林水産物及びミネラルウォーターの計10品目に関して、消費者の食生活、食品安全性に関する意識、社会貢献への関心度、放射能汚染に関する意識、社会的属性といったことが、これらの食品に対する購買意欲にどう影響しているかを分析し、こういった消費者の特徴の違いに関わる要素の中で、風評被害につながっていると考えられる部分について分析した。 分析により、アンケート調査で聞いた10品目中でも特に米、ミネラルウォーター、ワカメでは、産地が原発に近い場合は購買を回避したいと考えている消費者の割合が高い傾向が見られた。 放射線に関して十分な知識を持たない消費者や、居住地が原発から離れているため普段原発近辺を産地とする食品を店頭で見ることの少ない消費者ほど原発近辺を産地とする商品の購入を避ける傾向が見られ、こういった消費者は少なからず風評の影響を受けている可能性が示唆された。一方、放射線に関する知識や放射線の子供の影響を懸念して原発近辺の食品の購入を回避している消費者も見られ、風評だけが原因で購入を回避しているとは言えない側面もあることがうかがえた。 この研究の成果については環境経済・政策学会2015年大会、国際エネルギー経済学会(IAEE)2015年大会、オーストラリア農業資源経済学会(AARES)2016年大会などで発表した。発表内容は今後国際的な学会誌や書籍として公表する予定である。
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