研究課題/領域番号 |
25712026
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
福田 信二 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (70437771)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 生態系影響評価 / 生態工学 / 生息場モデル / 移動分散 / 水域ネットワーク / バイオテレメトリー |
研究実績の概要 |
本研究では、福岡市西区を流れる瑞梅寺川の約430m区間を対象水域に、バイオテレメトリー調査を実施し、魚類の移動分散特性の評価を目指している。今年度は、継続調査のデータ(2015年4月~7月)を回収したが、設置した受信器のうち、河川部に設置した6台が紛失しており、一部のデータを得ることができなかった。しかしながら、ため池に設置した受信器はすべて回収できていることから、遊泳位置推定手法の確立への影響は少ないものと考えている。なお、同データの解析が終了次第、成果を発表する予定である。 また、湧水を起源とする都市小河川に生息する希少魚種を対象に、同種の移動分散特性を評価するための基礎調査を実施しており、成果が集積されつつある。その他、府中用水における生態水理調査を実施し、灌漑期と非灌漑期における水理環境の変化とそれに対する魚種ごとの応答について基礎的に解析した。結果として、各魚種が利用する環境特性が流速と水深によって特徴づけられることに加え、同水路における魚類の種多様性に灌漑が大きく影響していることが示唆された。 具体的な成果としては、超音波多層流向流速計(ADCP)を用いた流水環境調査と淡水魚の空間分布の関係性をランダムフォレストで解析した結果に加え、structure-from-motion法により、小河川において実施した生態水理調査の結果を国際会議(ISE2016)において発表した。また、データの質的特性が空間分布モデリングに及ぼす影響を評価した研究および4種類の決定木の導出アルゴリズムの再現性および同モデルから抽出される生態情報を比較した研究が国際誌に掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
バイオテレメトリー調査は、受信器を紛失したものの、多くのデータを得ることができた。データの損失分だけ、解析手法の開発が困難になることが想定されるが、当初からのデータを有効活用することにより、手法の確立は十分に可能であると考えている。高い学術性を確保するために、位置精度や誤差指標等に基づいて、バイオテレメトリー調査のデータのスクリーニング等を実施する必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
バイオテレメトリー調査に基づく魚類の空間分布データに、超音波多層流向流速計(ADCP)を用いた流水環境調査の結果を統合することにより、高精度な分布データを得る。そして、このデータをもとに機械学習を援用した高精度な生息場モデルを構築するとともに、移動分散パターン(例えば、日周性等)を定量評価する。また、空間分布モデリングの手法に関する実験的・応用的数理解析を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度の調査において、洪水等の影響により、バイオテレメトリー用受信器のうち、計6台を喪失したため、当初予定していた解析方法を変更する必要が生じた。これに対応するための追加解析等には時間要することから、事業期間を延長するとともに予算を繰り越す必要がある。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年8月までに空間分布データを作成し、高精度な生息場モデルを構築する。また移動分散パターンの定量化等を含めて、成果をとりまとめ、論文を執筆する。
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