近年、植物工場における生産品目は拡大傾向にあり、2次代謝がより重要となる高機能植物(ハーブ類や薬用植物)の研究が急増している。このため、細胞内の代謝分子情報を利用した環境調節工学(Speaking Cell Approach: SCA)や、数理モデルを駆使した工学的な代謝制御の研究が、重視されるようになってきた。しかし一方で、学術上の課題として1)数万の遺伝子や数千の代謝情報(オミクス診断情報)を包括的に扱うための理論的基盤が十分でないこと、2)細胞レベルの分子情報を個体レベルの成長制御等に利用するためのミクロからマクロまでの全階層を繋ぐ学術基盤が欠如していること、が大きな課題となっている。これらの課題の克服は容易ではないが、植物工場の革新的な技術開発のためにも、挑戦的かつ大規模な研究が求められている。 このような背景の下、代表者は「体内時計」に着目し、本研究を提案している。体内時計は、①数百に及ぶ遺伝子群の発現調節を行い植物成長に重大な影響を与えている、②レポータ遺伝子によって活動を可視化できる、③物理学を基盤とした理論研究が可能となっているなど、上述の課題の解決において有効な特長を持っている。本研究では、新たに2つの研究手法を開発することでこれまでの研究を発展させ、細胞から個体までの全階層を繋ぐことができる包括的な代謝制御体系である「体内時計制御工学」を構築し、学術上の重要課題の解決に寄与することを目指した。
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