研究実績の概要 |
初期胚盤胞は内部細胞塊と栄養膜外胚葉から成り、これら細胞の協奏によって胚全能性が支持されている。これまでに内部細胞塊からはES細胞が、栄養膜外胚葉からはTS細胞が樹立されているが、TS細胞の培養条件は最初の報告以来、殆ど改良がなされておらず、高い質と未分化安定性を支持し得る新規TS細胞培養条件の同定が望まれた。研究代表者は平成26年度までにTS細胞を血清やフィーダー細胞を用いない、化学的定義条件下(N2B27/Neurobasal/DMEMF12/FGF2/Activin A/XAV939/Y27632 on fibronectin, FAXY)で樹立、維持することに成功し報告したが、平成27年度はこれらTS細胞と従来培養条件下で共存する多様な形態を示すTS細胞コロニーについて分子生物学的性質を明らかにするべく、理化学研究所筑波研究所の小倉淳郎室長の研究グループと共同研究を実施し、従来TS細胞培養条件下で見られるドーム型の形態を示すコロニーがElf5を高発現しており、幹細胞の自己複製を主に支持していること、FAXY TS細胞はこれと良く似た分子生物学的性質を示すことを明らかにした(Motomura K et al, Biol Reprod, in press)。 また国際核移植シンポジウムにおいて、ES細胞およびTS細胞を用いた試験管内初期胚再構成についてポスター発表を行なった(International symposium on the future of nuclear transfer and nuclear reprogramming, 3 March 2016, Kofu, Japan)。 また尿中に含まれる細胞を用いた体細胞核移植による全能性再獲得に関する論文発表を行なった(Mizutani E et al, Sci Rep, 6: 23808, 2016)。
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