研究実績の概要 |
VPS51, VPS52, VPS53, VPS54は一分子ずつ結合してGARP complexを形成する。そのため、これら遺伝子を欠損すると同様の表現型が現れると予想され、確かにVps51、Vps53それぞれの欠損胚はVps52欠損胚と同様に着床直後に致死となることを突き止めた。一方、Vps54欠損胚は発生中期まで生存し、その過程で卵黄嚢の血管形成に著しい異常が現れることから、Vps54は血管形成に重要な役割を担っていることが新たに判明した。さらに、GARP complexを構成する因子として新たに同定したCCDC132ならびにTSSC1を欠損させたマウス系統も新規に作出し、表現型解析を行ったところ、これら2遺伝子の欠損胚はお互いに同様の表現型を示し、受精後8.0日頃に発生が停止することがわかった。欠損胚では臓側内胚葉に胞状の小突起が生じていることが確認された。これは、変異によって胚体外胚葉ならびに胚体外外胚葉の発達が著しく阻害されている状況において臓側内胚葉は増殖を続けたことが原因で細胞層が突出したためと考えられる。このように、GARP complexの構成因子それぞれを欠損させたときの表現型が幾つかのグループに分類されることから、GARP complexは発生過程において、組織特異的、時期特異的に必要とする構成因子を使い分けることで様々な生命現象に関わっている可能性が示唆される。 Vps52が発現している組織の一つである肝臓で特異的にVps52を欠損させたところ、オートファジー関連遺伝子Beclin1を肝臓特異的に欠損させたときと極めて類似した表現型を示した。このことから、GARP complexがオートファジーの制御に直接あるいは間接的に関与している可能性が示唆される。Vps52欠損細胞を用いてプロテオーム解析を行ったところ、オートファジーと関連のあるタンパク質が同定された。これらの結果からも、GARP complexとオートファジーとの強い関連性が示唆される。
|